医者を長くやってると、変わった症状の患者に出会うことがある。
症例の少ない奇病というのもあるが、そういうのとは一線を画すやつだ。
この間来た患者がそれだったんだが、参ったよ。
霊障だと伝えたのに、ヤブ医者を見るような目で見てきた。
そもそも、うちは耳鼻科だ。
あの患者が行くべきは心霊科だった。
そんなものは医師免許に含まれてないがな。
あの患者は『音が聞こえなくなった』なんて主張してたが、実際はそんなもんじゃなかった。
まず、入ってきた時にドアを開ける音がしなかった。
椅子に座っても軋む音すらしない。
話を聞こうにも、本人は必死に話しているように見えたが、まったく声が出ていなかった。
やり取りは筆談になったが、書く音もない。
でも、文字はちゃんと書けていた。
医学でも科学でもあんなことは説明できない。
あれが霊障でなければなんなんだ?
何をしたらあんなことになるんだ?
最後に治療方法を聞かれたから答えておいたよ――
少し様子を見ましょうってな。
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