夜の雷門中グラウンドは、妙に静かだ。
自主練のあと、最後に残るのは大体俺だ。
ボールの感触を確かめる時間は、思考を整理するのにちょうどいい。
その日も、ロングパスの軌道を確認していた。
蹴ったボールが月明かりを横切る。
完璧な弧。
――だが、落下地点に“誰か”がいた。
黒い影。
背番号は見えない。
だが確かに、受ける体勢に入っていた。
ボールは止められ、静かに地面に置かれた。
おかしい。
今日はもう全員帰ったはずだ。
「……誰だ?」
返事はない。
影は、ゆっくりこちらへボールを蹴り返した。
正確すぎるパス。
無駄がない。
まるで、俺の思考を読んでいるような位置取り。
試すように、ワンタッチで方向を変える。
影は即座に対応する。
フェイントを入れる。
遅れない。
視線誘導も効かない。
背筋が冷えた。
こいつは――俺の癖を知っている。
「……面白い」
冷静を装いながら、さらに速度を上げる。
だが影は常に最適解を選び、進路を塞ぐ。
俺のプレーを、完璧になぞるように。
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