「お!ドラゴンブックスにジャガーバックス、ユアコースシリーズと懐かしの児童書ばかりじゃない!」
私はエミの自宅の倉庫で1970年代に出版された大量のオカルト系児童書に目を輝かさせていた。この手の児童書は1970年代のオカルトブームの時に出版されたのが主である。1970年代は科学の発展によって、冷戦にオイルショックや公害、環境問題などが多発しており、地球は駄目になるのではないか?と叫ばれた時代であった(だからこそ、「ノストラダムスの大予言」が受けいられたのだ)。オカルトブーム自体、地球社会に対する不安と自然回帰へのネイチャー志向への産物かもしれない。
「凄いだろ?俺も昔、よくその児童書を読んでいたけどさ。もうこの児童書はいらなくなったし、処分しようと思っていたんだ。大鷹さんが児童書を引き取ってくれて感謝しているよ。あ、そうそう、ドラゴンブックスに関してはかなりの高値で売れるらしいぜ。メルカリに出し見たらどうだい?」
「いやいや、これは私が全部が所有することにするわ」
エミは麦茶を飲み干しながら、大量の児童書を袋に詰める。
「ねぇ、エミ。それにしても、この大量の児童書どうしたのよ?昔、私がエミの家に遊びに来た時、ドラゴンブックスとか無かったし」
「そのオカルト系児童書はな。俺がガキの頃に通っていた散髪屋の親父が譲ってくれたんだ。まぁ大鷹さんが知らなくても当然だよな、すぐに倉庫に押し込んだわけだし」
「散髪屋の親父?ああ!カカちゃんの事ね!覚えている!覚えている!でもあの人、当時に独身でまだ20代前半くらいだったわよ」
「カカさんが言うには散髪屋の常連さん(独身の大工のおっさん。名前は「春山」という方であった)が大量の児童書を貰ったからなんだ。と・こ・ろ・がだ。カカさん、狭い自宅に大量の児童書を置くところなんてない、カカさんは
「まるで不良物件を押し付け照られて倒産した企業みたいだ」
なんで俺にぼやいていたな。それなら「ブックオフ」に売った方がいいといったんだけど、カカさんは
「あそこは買取価格が安いから駄目だ、だから「ブックオフ」のような大手古本チェーンが「しくじり企業」よろしくといわんばかり廃れて、胡散臭すぎて「しくじり企業」予備軍になりかねんメルカリが台頭してくるんだよっ!」
なんて言っていた。つーことで俺に渡した経緯があるんだよ」
エミは麦茶をがぶ飲みすると目を瞑る。
「カカさんから大量の児童書を送り付けられてから変なことが起こったんだ」
それはエミがカカちゃんから大量の児童書を譲り受けてから数日後が立った日の事であった。その日、エミはドラゴンブックスの「恐怖と怪奇の世界 吸血鬼大図鑑」を読みながら、テレビでジャック・ニコルソン主演のアメリカンニューシネマ「ファイブ・イージー・ピーセス」を見ている時であった。エミは「吸血鬼大図鑑」読んでいる時にある事に気が付いた。女性の長い黒髪が挟まっていたからだ。エミは黒髪をつかむ。
「これ、いったい誰の髪の毛なんだ?カカさんじゃなさそうだし・・・」
エミは黒髪をゴミ箱に放り投げる。エミは「吸血鬼大図鑑」を読んでいる時に嫌な予感がしてきた。エミは自分の部屋に置かれている児童書を調べ始める。児童書の中から長い黒髪が大量に見つかった。
「なんだか薄気味悪いな・・・。倉庫に置いておくか・・・」
エミはそのまま児童書を倉庫に持って行った。そして、エミは嫌な気分を忘れるため、「ファイブ・イージー・ピーセス」を見ることに集中していたのだという。だが、ゴミ箱からの嫌な気配は一向に消えなかった。その時、
パン!
とゴミ箱の方から音が聞こえた。エミは恐る恐るゴミ箱の中を見る。ゴミ箱には先ほど捨てた黒髪がなかったのだ。エミは一息つくとテレビの方に向ける。今はどうやらCMタイムであった。なお、CMは山口県の和菓子製造会社「豆子郎」であった。勿論、「豆子郎さん通りゃんせ」である。エミはこの時、CMで映っているういろうが無性に食べたくなったのは言うまでもない(私自身も「豆子郎」のCMを見て、ういろうが食べたくなることがあったのだよ、はははッ)。
「!」
エミは思わず悲鳴を上げた。なんと、そのCMには腹踊りをするピエロが写っているではないか!エミはへたり込んだという。
「エミ!その「豆子郎」のCMの話、私も知っているわよ。クラスメートたちの間でも「豆子郎」のCMを視聴した子が大勢いて、腹踊りピエロの話題で持ちきりになったし。まさか、児童書の黒髪が「豆子郎」のCMに突如現れた腹踊りピエロの話につながってくるなんて・・・」
私は真っ青になったのは言うまでもない。
それから、数年後、エミはカカちゃんが勤める散髪屋で散髪している時に子供の時にもらった児童書の事を聞いた。
「ああ、大工の春山さんに押し付けられた児童書の事だな?あの児童書は春山さんが大工の仕事に行った家の奥さんから大量の児童書を押し付けられたんだよ。奥さん曰く
「あんな本早く処分して!」
と春山に行ってきたんだ。児童書の持ち主というのはその家の旦那の妾の子供なんだそうだ。子供が小学校高学年の時に梅毒とエボラで亡くなったそうだよ。妾の子の怨念が本に乗り移っているんじゃないか?だからあの奥さんは春山さんに児童書を押し付けて、児童書に潜む妾の子の怨念におびえた春山さんが俺に押し付けたんじゃないか?って感じてしまうんだよ」

























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