「我が子を食らうサトゥルヌス」という絵画をご存知だろうか。
ローマ神話に出てくるサトゥルヌスという神がいる。
彼は将来、自分の子が自分を王位から引きずり下ろすという予言を受け、その恐怖から産まれてくる子を次々と食らったという。
その話を元に描かれた絵画のことだ。
皆もネットで画像検索をしてほしい。
恐怖に駆られた表情でサトゥルヌスが我が子を食らっているのだが、娘を持つ親としてはなんだが怖いというよりも悲しい気持ちになってしまう。
前置きはこの辺にして、先日出張で中部地方へ行ったときの話だ。
抱えていた仕事も終わり、その日の宿へと向かった。
フロントへ名前を伝えたが、会社側のミスで予約が取られていなかったようで自分で宿を探すことになってしまった。
更に夏休みシーズンということもあり、中心街のビシネスホテルはほぼ満室で予約も取れず、途方に暮れていた。
仕方なく中心街から離れ、車を走らせていると山の麓に一つだけラブホテルがあった。
日中の仕事で疲れきっていた俺は、この際ラブホテルでもいいと思い、駐車場へ車を停めた。
田舎あるあるのコテージごとに独立しているタイプのため、車を停めるとすぐ部屋へと上がった。
少し古びた匂いはしたが、清掃も行き届いており、部屋からフードの注文もできたので結果的にビジネスホテルよりも快適だった。
…ただ1つ気になる点をあげるとすれば、テレビの横に掛けてある絵だ。
前置きにも書いた「我が子を食らうサトゥルヌス」の絵が飾ってあった。
こんな不気味な絵、カップルが見たら萎えるんじゃないのか?
そのときの俺はそれくらいのことしか思っていなかった。
そろそろ寝ようかとベッドに仰向けになる。
下を向くとサトゥルヌスと目が合う。
目を見開き引きちぎるように我が子を食らっている。
正直気持ち悪くて見たくないので早々に電気を消して布団を被った。
ほろ酔いだったこともあり俺はすぐ眠りについた。
…夢をみる。
誰かに体を掴まれている。
自分の胴体より大きい手で、指先が体に突き刺さるほどの力で掴まれる。
そいつは息を荒らげ、聞いたこともないような言語でぶつぶつと何かを呟いている。
荒い鼻息が顔にまとわりつき、俺の体を握る力が徐々に強まっていく。
痛みと恐怖でパニックになっていると、急にそいつが顔を近づけてきた。
サトゥルヌスだ。あの部屋の絵にいた。




























怖
たしかに、ゴヤは寝室に掛けておきたい絵じゃないですねー
オチまで読むと「裏返した絵を再度ちゃんと見てみたら、ただのどうでもいい風景画だった」みたいなことを妄想しちゃいます