幼い頃、母親とDVDレンタル屋に毎週通っていました。
店の奥にはアダルトコーナーがあり、入り口には中が見えないように幕が掛けてありました。
下心から少し覗こうと思ったら、スーツの足元がコーナーの中を動くのが幕の下から見えました。
私は外からその足元だけがみえていました。
その人は交互に足を動かすのではなく、空中浮遊をするように「ススッー」と両足を揃えたまま移動していました。
気持ち悪かったです。幽霊が飛んでいるようでした。
しかもその足元はずっと中を高速で動き回っていて、私はコーナーの入り口で立ち尽くしてしまっていました。
母親に「行くよ!」と言われてその日は帰りました。
次の週にも行きました。
次に借りるDVDよりも、あのスーツ男のことが気になっていました。
私はまたアダルトコーナーの入口から、その足元が現れるのを待って、幕の下から見えるコーナー内部の足元のスペースを外から凝視していました。
しかし、誰も通りませんでした。
毎週来るとも限らないよな、と思い、帰ろうとして振り返ったとき
スススーッ
っと、スーツの男が向こう側から高速で動いてやってきました。
うわあぁあぁぁあっ!!!
と、その男とぶつかる直前で記憶を失ったのですが、そのスーツ男の目玉は、くり抜かれたように黒い空洞になっていて、口も大きく開いていたグロテスクな印象が今でも残っています。
結局、その後のことはあまり覚えていません。当然母親に家に連れて帰られたのだと思いますが、ショックで記憶がありません。
ただ、その事件以来、うちにはそのレンタル屋の無料クーポンが大量にあります。
きっとあの事件と何か関係があったのではないかと、今は考えています。






















※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。