俺は今年四十の、ごく普通の独身サラリーマンだ。
これといった趣味はないのだが、今唯一の楽しみといえば週末休み前の深夜のドライブだ。
ドライブというと聞こえはいいが、
単に日が変わる位に家を出て後はただひたすら走る。
それだけの本当に単純なものだ。
ただスピード狂ではないから、
のんびりと好きなジャズでも聴きながら刻々と変わる景色を眺めつつ走り続けるのが、今の俺流の至福のひととき。
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その日も夜中の十二時位に、愛車のアウディで自宅マンションを出て街中をただ走っていた。
目映いイルミネーションの眠らない歓楽街を抜け閑静な住宅街をしばらく走ると、道は少々狭くなって傾斜がついてくる。
ここから山道に入っていく。
この山道は利用者が少なくて、ゆっくりドライブを楽しめるのだ。
右側からは並び立つ鬱蒼とした木々が迫り反対側は白いガードレールが果てしなく続いており、そのはるか向こうにはパノラマのような街の夜景が広がり
、真ん丸の月に照らされた山々の稜線が一服の墨絵のように広がっている。
季節はもう秋だからエアコンの必要はない。
音楽のボリュームを少し大きくする。
この時間がまさに至福のひとときだ。
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お気に入りのBGMに浸りながら、
しばらく単調な山道を軽快に走っている時だった。
いきなり後方から耳障りな音が大音響とともに聞こえてきた。
♪きーみーがあああ、よおおおはー……
驚いて思わずバックミラーに目をやる。
暗闇でよくわからないのだが、中型のトラックのようだ。























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