私の家には、開かずの間がある。
板壁が打ち付けられ、中に入る事のできないその部屋は、はるか昔にご先祖様が封をしたらしい。
物心ついた頃から、私はその部屋がずっと気になって仕方なかった。
何故かは、解らない。
でも、とても懐かしい気持ちになるのだ。
ある晩。
その部屋の壁越しに、赤ん坊の鳴き声が聞こえた。
気になった私は、母にそれを尋ねてみる。
しかし母は何も教えてはくれない。
母は台所に飛び交う虫を一心不乱に殺してまわっていた。
今度は祖母に聞いてみた。
私の懇願に負けて、祖母は私に教えてくれた。
「ある日、あの中から叫び声が聞こえたんで壁を壊してみると、中で人間の赤ん坊が泣いていたんだ」
「それがお前だよ」
翌日。
蟻の顔をした母は台所に飛び交う私ととてもよく似た顔をしたおぎゃあおぎゃあと鳴く虫を一心不乱に殺してまわっていた。
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私以外人間じゃない……?