大学生の頃、コンビニでバイトしていた時の話。そこは少女の霊が出ると有名ないわく付きスポットで、そのせいか時給がめっちゃ良かった。怖いもの見たさで来る客が多いので、金だけはあったのだろう。
ある日、そのコンビニに同級生の二人(A,B)が肝試しに来ることになった。肝試しといっても、コンビニの駐車場でこっくりさんをした後、買い物をして帰るだけなのだが。私はもちろん店員側としての参戦だ。
実行は深夜2時。この時間になると店長も客も来ないので、ある程度入り口に目をやりながらスマホで情報交換ができる。またシフトが2時半に終わるので、ついでに同級生の車に乗って帰ろうと計画していた。我ながら完璧な計画だった。
ーー
当日1:55。ついに、二人を乗せた自動車が駐車場に見えた。間違いなくBの車だ。大学生らしい赤色の軽自動車が、一台として車が止まっていない駐車場にポツリと止まっていて面白かった。もうそろそろコックリさんを始める時間だろう。ラインを見るためにスマホを見た。
すると突然バックヤードから、
「こっくりさんこっくりさん、おいでください」
と聞こえてきた。高い少女の声だ。少し無機質で機械的。無論、店内には少女はおろか、私以外の”人間”はいない。
「こっくりさんこっくりさん、おいでください」
また聞こえた。本能か恐怖か霊の仕業かはわからないが、なぜだか金縛りのように動けなくなってしまった。バレないように必死に息を殺した。
「こっくりさんこっくりさん、おいでください」
何度もコチラに呼びかけてくる。次第に、バックヤードの壁をドンドン!と叩きだした。その衝撃で、タバコや唐揚げがブルブルと震えるように揺れ、レジの中の小銭がジャカジャカと音を立てる。初めは探るようにドンドン!と壁を叩いていたのが、次第に私の方に衝撃が集中するようになった。おそらく、壁一枚挟んだ裏側にはいて、すでに気づかれているのだろう。
2分も経つと本当に限界がきて、無意識のうちに涙が出てきた。涙目になって必死にラインでメッセージを送るが、なぜか回線が繋がらない。それでもようやく、「助けて」とメッセージを送ることができた。
だんだんと意識が朦朧としてきて、私はついに気を失ってしまった。
ーー
「おい、なんで無視するんだよ」
レジに並ぶAから声をかけられ、私は正気に戻った。だがこんなことがあった直後に、こっくりさんをしていた車に乗り込む気にはならなかった。
「いいや、タクシーで帰るわ」
「なんで」
「いや、こっくりさんしてた車に乗りたくねーよ」
「一人じゃ怖いだろ?しかも高いし」
「運ちゃんと話すからいいんだよ
ここ時給いいから、金ならある」
「ビビリがよ」
「ビビリも何もヤバかったんだぞ
助けてって送っただろ」
「なんの話だ?」
「え?送っただろう」
「まあいいや、乗らんならBと帰る
つまんねーな」
「あっそ、じゃあね」


























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