私だけに聴こえた！キラキラ星の恐怖

キラキラ星はどこでもよく耳にするメロディです。
パンの移動販売の車から流れて来たり、ABCの歌も同じなので子供の英会話スクールの講師のアルバイトをしていた時は毎日始めに歌っていました。
そして今日は保育園の参観日で娘が木琴で合奏しています。
何だか頭がボーッとしてきて意識が遠のいていく、いつもそうなんです。多分私は普通の人以上にこの曲が聴こえてくることに心が反応していると思います。

その理由は今から10年位前に体験した不思議な出来事のためなのです。
このメロディを聴くたびに当時の音が重なってきて変な感覚になるんです。

私は小学5年生から高校2年生まで親の仕事の関係でフランスに住んでいました。
帰国した当時は帰国子女で都内の女子校に編入しましたが勉強にもついて行けず友達もなかなか出来ず辛い生活を送っていました。
そんな時心の支えだったのは小学校の時の思い出でした。そしてその癒しのきっかけは夕方聴こえてくるキラキラ星のバイオリンの練習の音でした。

全然上手くなくてむしろ聞き苦しい演奏なのですが小学校の時と同じ音が、同じ時間に聴こえてくるので、涙を流しながら聴いていました。

弾いているのは同じ年の亮君に違いありませんでした。教育熱心な家で小学校から私立で習い事も沢山していてバイオリンもその一つでした。
「相変わらずいやいややらされてるんだ」と気の毒に思いながら、私にとってはとても心地よい音でした。
「亮君も頑張ってるから私も頑張ろう」と私の心を強くするトリガーになっていました。

高校3年の秋、帰国子女枠で有名大学に合格して気持ちは舞い上がっていました。
「帰国してから頑張って来て良かった、頑張れたのは亮君のキラキラ星のおかげだ」と強い思いが湧きあがってきて、ポストにお礼の手紙とチョコレートを入れました。

次の日は休日でしたがインターホンが鳴って母が出ました。暫くして母が私の部屋に来て驚くべきことを告げられました。今住んでいる人は亮君の親戚で数年前からこの家に住んでいる。亮君はうちが帰国する数年前に自分の部屋で亡くなったというのです。
そのタイミングで「思い出の場所を離れたい」という事でご両親からこの家を譲り受けたというのです。とにかく亮君はここにはいないし、この世にもいないという事実が判明したのです。

そしてもう一つ衝撃の事実は帰国してから父も母もバイオリンのキラキラ星なんか一度も耳にしたことがないというのです。完全に訳が分からなくなりました。その日以来私にも夕方のキラキラ星のバイオリンの音色は聴こえなくなりました。その代わりキラキラ星、ABCの歌を聴くたびに腑に落ちない変な気分になることがずっと続いていて一生続くんだろうと思っています。