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心霊

裏メシ屋さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

お菓子売りの婆さん
短編 2025/01/19 00:06 1,498view
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小学生の頃、通学路でいつも手作りのお菓子を売ってるおばさん(というかおばあさん?)がいた。
いつも同じボロボロの半纏を着ていて、髪はボサボサの長い白髪、子供達はその人のことを『山姥』と呼び、親にも近づかないように言われていたので関わらないようにしていた。

ある日、山姥がいつものように空き地にレジャーシートを広げてお菓子を売っていた。
いつもならスルーする俺だが、その日はカラフルで綺麗なお菓子が目に止まり、ついつい近づいてしまった。
山姥は俺が近寄ると、低い声で「ゆっくり見ていきなよ」と言った。

山姥の風貌から、売っているお菓子も大したものじゃないだろうと思っていたが、俺はレジャーシートに並べられたお菓子を見て驚いた。
格子模様のクッキーにフルーツが入ったパウンドケーキ、カラフルなメレンゲ菓子などが綺麗にラッピングされて並んでいた。
この汚い婆さんがこんな綺麗な菓子を作っているのか?と頭が混乱した。
山姥はお菓子に興味を持った俺に
「これは10円、これは5円……」

というように値段の説明をしてくれた。
そのいずれも安く、俺でも買える価格だった。
「じゃあ、これちょうだい」
俺は名札の裏に入れていた10円玉でクッキーを買った。
山姥は歯のない口をニッと開いて笑った。
そして
「ありがとうね、ありがとうね」
と言い、おまけに瓶に入った金平糖(これはおそらく既製品)と、カップケーキのようなものをくれた。

帰宅後、俺は親に悟られないようにひとりでこっそり買ったクッキーを食べた。
クッキーは不味くはないけどリピ買いするほど美味くもない、普通の味だった。

カップケーキは食べようと思ってラップを外したらカビが生えていたので捨てた。
出来心で寄ってみたけど、もう山姥のお菓子を買うことはないな、と思った。

翌日の学校帰りも山姥は同じ場所にいた。
俺は山姥の前を通る時、なんとなく素通りしづらかったため
「昨日買ったクッキー美味しかったよ」
と声をかけた。
山姥は俺がお菓子を買った子供だとわかると
「昨日はありがとうね。今日はこれをあげるよ。お金はいらないからね」
といって茶色い紙袋を渡してきた。
なんとなく気が引けて断ったが押し付けられてしまい、結局持ち帰った。

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