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心霊

SOUさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

4番テーブル
短編 2025/01/14 14:38 605view

 一部地域に展開するファミレス。
 ディナーの時間を終え、客足もまばらになってくるとフロアを回すバイトの数も減っていく。やがて閉店時間を迎えるという頃には、キッチンに二人、フロアに一人という必要最低限の人員しか残っていなかった。
 その時、店内に客の姿はなし。
 閉店時間にはまだ少し早いが、フロアのKさんは入口のドアの鍵を閉め、キッチンに向けて「お疲れ様でしたー!」と声をかけた。キッチンの二人もそれに「お疲れ様です」と返事をして閉店作業を進め、Kさんも通常通りの作業を進めた。
 Kさんは明日が休みという事もあり、鼻歌交じりにご機嫌で明日の朝の開店準備を始めている。
 その時突然、ピンポーンと、あるテーブルからのコール音がなった。「え?」と思ったものの、無線を利用したシステムのため、外を走るトラックなどが原因で時折誤作動が起きるのは知っていた。だからさほど気にした様子はなく、ボタンを押して4と表示されていたのを消して作業へと戻った。
 端のテーブルから順番にモーニングのメニューを置いていていくと、ふと、何かが耳に届いた。「ん?」と手を止め、店内を見渡す。当然誰もいないし、キッチンからの作業の音が小さく聞こえるだけだ。
 気の所為かと、Kさんは再び作業に戻った。
 調味料の位置を置き直したりしながら、リズム良く各テーブルにモーニングメニューを置いていく。
「す……ませ…」
 するとまた耳に音が届いた。今度は肉声の様に聞こえた。気の所為ではない。
 Kさんは手を止め、音のした方へ向けて耳をすませた。

「すいません…」
 間違いない。はっきりと聞こえた。確かに店内に客は誰もいなかったはずなのに。
 声のした先を見る。その方向は、四番テーブル。先程コールが押されたテーブルだ。
 さすがに気味が悪いと思ったのか、Kさんはキッチンへと駆け込んで今あった出来事を説明すると、キッチンスタッフのうちの一人であるS君は洗い場を片付けながら視線を向けてくれた。
「もしかしたら、トイレとかに誰かいたんじゃないですか?ちゃんと確認してみたら?」
 Kさんは、そうだよねと数回頷くとトイレへと焦ってかけ出して行った。
 程なくしてKさんは戻ってきたが、やはりトイレには誰もいなかったという。勿論、四番テーブルにも誰も座っていない。
 その報告を再びキッチンにすると、黙ったまま手を動かしていたもう一人のスタッフ、A君がようやく口を開いた。
「気にすることないと思う。前もあったから」
 それだけ話すと、A君は淡々と作業を進めていく。あっさりとしたA君に、S君とKさんは顔を見合わせて苦笑を交わした。気味は悪いが、作業終わらせない限りは帰ることも出来ない。S君は無言で頷いて、Kさんに激励を送る。Kさんもそれに頷いて返すと、フロアに戻り作業へと戻った。
 その後も数回「すいません…」の声が聞こえたような気がしたが、その度頭を振るなど気概を見せ、Kさんはなんとか仕事を終えた。その頃には涙目になっていたが、足早に職場を後にして帰っていった。
 翌々日の休み明け、再び出勤したKさんは、他にフロア担当がいる間に笑い話として一昨日の話を他のバイトにしたところ、数人が暗い表情を浮かべた。

 聞けば、Kさんと同じ経験をした人が何人もいるという。
 最初はピンポーンとコールボタンが押され、しばらくすると「すいません」と声をかけられる。いずれも四番テーブルで、自称霊感あり女子は、そこに座る女性を見た事があるという始末。
 いよいよ気の所為だけではすまなくなってきたと、数人で店長へと直訴に出た。
 けれど店長は、そんな話はあちこちの店舗で聞く、だそうで、大して問題にもしてくれない。
 だが、突然「辞めます」と言い出す女性スタッフが出始め、仕方ないとばかりに知り合いの拝み屋さんを呼んで祈祷をする事にした。
 開店前、店長は数人のバイトスタッフと共に、お祓いの類の祈祷を受けた。
 店内や店長はおろか、四番テーブルの付近でもそれは行われた。
 拝み屋さん曰く、ここに悪い気は流れていない、と。
 その言葉に胸をなでおろした女性スタッフたちは、これで深夜番でも怖くないね、などと口々に喜びを露にした。
 それでもKさんはどうにも怖い気持ちが抜けきれず、その日の深夜番には店長も同席してくれと頼み込んだ。大事なスタッフの頼みだと、店長は仕方なしにその日は閉店まで残ることにした。
 とは言っても、深夜は客足もほとんどないため、スタッフの人手は足りている。店長は店に出ての仕事は大してやることもないので、休憩室で事務的な作業をしていた。
 パソコンに向かい、キーボードを叩く。静かな休憩室にはその音だけが響き、時折店内の音が聞こえるくらいだったので、店長は思わずウトウトと意識を手放し始めた。
 すると…

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