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都市伝説

セイスケくんさんによる都市伝説にまつわる怖い話の投稿です

東風吹かば毒の雨
短編 2024/11/25 08:28 205view

中学時代の同級生から、ネットで見かけたという、興味深い二つの都市伝説を聞いた。

それは、一見すると単なる古びた迷信のように思えるが、どうも心に引っかかるものがあった。忘れられないほどの恐ろしい感覚が、まるで風のように私の背筋を吹き抜けた。

《毒の雨》

梅雨のある日、南部地方のとある村に「クロバエ」という名前で呼ばれる変な風が吹いた。

風は湿り気をたっぷりと含み、まるで重たい布団をかけられたように、村全体を覆い尽くした。

その風は異様にベタベタと感じ、皮膚にまとわりつくような不快感を与える。

しばらくすると、村人たちは何も言わず、次々に家の中へと逃げ込んだ。

その直後、冷たい雨が降り始めた。

村の人々はその雨を「毒の雨」と呼んで恐れた。

特にこの雨に触れると、皮膚がただれ、痛みが走り、数日間は動けなくなるほどだ。

最初の被害者は若い男だった。

彼は外を走っている途中、急に降り始めた雨に濡れてしまった。

雨は見た目には普通の雨と変わらないが、肌に触れると粘性があり、独特の臭いがしたという。

数日後、男の体は腐るようにただれ、激しい痛みに悶えながら死んだ。

その様子を目撃した年老いた村の者が言った。

「クロバエの風が前触れだ。

あの風が吹いた後には、必ずあの雨が降るんだ」と。

村の古老たちは、その風が「神の怒り」を象徴していると信じていた。

毎年、クロバエの風が吹くたびに、村人たちは山の中にある小さな神社に向かって祈りを捧げ、雨が降り始める前に家の中で閉じこもるのが習慣となっていた。

奇妙なことに、風が吹いた後に雨が降る時期には、周囲の鳥たちが姿を消し、草木が萎れるという現象が繰り返された。

人々は次第にそれがただの偶然ではないと考え、さらに恐怖を募らせていった。

時が経ち、現代になってから科学者たちが調べたところ、この現象にはある仮説が浮上した。

それは、工場の排水や農薬が大気中に蒸発し、それが降水となって降り注ぐ、いわゆる「酸性雨」の一種であるというものだった。

湿気の多い南部地方では特にその影響が強く、毒性物質が雨に混じることで有害となるのだという。

科学者たちは「これは自然の成り行きだ」と説明しようとした。

しかし、村の人々は「神の怒り」という信仰を捨てることはなかった。

その恐れは、科学的な説明では決して払拭されることはなかった。

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