俺にしか見えない影の話
投稿者:ねこじろう (147)
長編
2024/09/14
10:35
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俺には影が見える。
影が見えるんだ。
※※※※※※※※※※
いつからだろうか?
思い返してみた。
始まりは恐らく3ヶ月ほど前の初秋のこと。
休みの日に一人、宛もなくバイクで走っていた。
県北部に連なる山々の一つに適当に目星をつけ、44個カーブのあるという噂の山道を軽快に走っている時だ。
彼方に連なる山々の狭間にある朱色の太陽を眩しげに眺めながら、何個めのカーブを過ぎた頃だろう。
連日の仕事の疲れからか、ほんの数秒間うとうとしたのだと思う。
あっと思った時は既に白いガードレールが間近に迫っていた。
激しい衝撃とともにバイクもろとも宙を舞った後、あっという間に雑草の密集する法面が視界に飛び込んでくる。
次の瞬間まるで高圧電流に触れたかのような強烈な痛みが全身に走り、目の前が真っ暗になった。
その後しばらくは静寂と漆黒の闇が辺りを支配した。
そして再び目を開いた時だった。
いきなり視野の隅々まで神々しい光に包まれる。
それから光の真ん中辺りから人の顔らしきのが徐々に浮き上がってきた。
それは懐かしい人。
去年亡くなった田舎のじいちゃんだ。
ただその顔はまるで魚眼レンズを覗いた時の姿のように、いびつに歪んでいる。
「じいちゃん!」
込み上げる思いから叫ぶと、日に焼け赤銅色の皺だらけな顔のじいちゃんは優しく微笑み、ふっと消えた。
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