俺にしか見えない影の話
投稿者:ねこじろう (147)
それからまた光の奥から人の顔が少しずつ浮き上がってくる。
━これはええっと、ええっと誰だろう?
懸命に記憶の糸を手繰り寄せる。
そしてようやく分かった。
それは中学生の時にいじめを苦にし首を吊って命を絶った友人の斎籐くんだった。
「斎籐くん、どうしてここに?」
俺の問いかけに色白で面長な顔の斎籐くんもニンマリと微笑んだ後、またふっと消えた。
そして最後に現れたのは何だろう?
真っ黒い影のシルエット。
それは例えて言うと夕暮れ時、西陽の逆光ではっきりと捉えられない人の顔のような風体をしている。
さらに目を凝らすと、影の奥に女の人の青い顔らしきものがボンヤリ透けて見えてゾッとする。
そうしているうち、その人も幻のように消え失せた。
それからも恐らくかなりの時間の間、闇の世界を彷徨っていたと思うが、再び目を開いた時はいきなり病室の白い天井が視界に飛び込んできた。
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結局俺は市内の救急病院に搬送された後、緊急手術を受け一命は取り留めたが絶対安静の中一週間意識を失っていたということだった。
体のあちこちに打撲傷、何本かの骨は複雑骨折を起こしていたらしい。
頭や胴体手足には包帯が巻かれ口には酸素マスクがされた状態で寝たきりのままほぼ一月が過ぎ、ようやく車椅子でならベッドを離れることが出来るようになったのは、入院を開始してから二月経った頃だった。
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その日朝から体調が良かった俺はベッドで昼食を終えた後車椅子で病室を出て、レストルームに行ってみた。
自動販売機でコーヒーを買った後、テーブルですすりながらボンヤリ周囲に視線を動かす。
薄いブルーの病院着姿で皆、思い思いの時間を過ごしている。
面会に来た家族と楽しそうに喋る中年の女性、
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