酒が飲めない理由
投稿者:須藤ロリス (1)
俺の会社の先輩はとにかくお酒が飲めない人で、飲み会に行ってもジュースやお茶ぐらいしか頼まない。
ある日、仕事帰りの居酒屋で先輩にそのことについて何気なく聞いたところ先輩はそうなった経緯を話し始めた。
「俺が酒ダメなのって体質というかトラウマみたいなもんなんだわ。
昔、俺が中学生ぐらいの時に大学のサークルの部長だった兄貴が飲み会で後輩にイッキ飲みをさせた事があってな。
その後輩は度数の高い酒を無理やり飲まされたもんだから、急性アルコール中毒で倒れて病院送りになったが助からなかったんだ。
兄貴は過失致死ってやつで有罪になって、刑務所行きにはならなかったものの慰謝料は結構取られたし、言うまでもなく大学は退学になった。
だが話はこれで終わりじゃない。
兄貴が酒を飲まして人を殺したという話が地元で広まり、俺ん家は孤立したんだ。
父ちゃんは人殺しの親が働いているという悪いイメージがつくのを恐れた勤め先からクビにされ、母ちゃんは近所の人達から無視されるようになった。
そして、俺は兄貴のことでイジメられた。
イジメと聞いて想像するような事は一通りやられたが、特にビールの缶に入った水を頭からかけられたり無理やり飲まされたのはハッキリと覚えていて今でもその時の夢を見る。
しばらくして噂が広まり地元にいられなくなった俺の家は田舎に引っ越して細々と暮らしていたよ。
それから俺は高校を卒業して働いていたんだが、俺が20歳の誕生日を迎えた日に兄貴が
『大人なんだから飲め!ほら!』
って言って肩に手を回して、頼んでもないのに俺のコップに酒を注ぎ目の前に突きつけてきた。
その時、俺の中で何かが一気に湧き上がった。
言葉じゃ表せないんだが…兄貴に対するドス黒い感情だったのは確かだと思う。
人一人をその場のノリで殺した上、それが原因で身内に苦労かけさせても反省ゼロな兄貴を見て吹っ切れそうになっちゃったんだろうな。
それからというもの俺は酒を見るたびに嫌な事を思い出すし、酒を飲もうとするとすげー気分が悪くなって吐いちまう。」
飲み干したサイダーのグラスを静かに置き、先輩は話を締めくくった。
「あれ以来、実家とは縁を切って二度と行かない事にしたよ。だから今の兄貴のことは知らん。」
「すみません、辛い過去を思い出させてしまったようで…」
「気にすんなよ。あくまでコッチの話だからお前が責任感じることはねぇ。すみませーん、お勘定お願いしまーす。」
先輩の話を聞き終えると、僕と先輩は居酒屋の会計を済ませて解散した。
帰り際、ふと先輩の方を見ると彼が落ちていたビールの空き缶を忌々しげに蹴飛ばした所が見えた。
辛い経験しましたね。
兄貴最低すぎる…
>2024/08/22/18:49の名無しさん
加害者家族ほどキツい立場はないですね
辛そう