【short_52】オレオレ詐欺

「あぁ、オレオレ、元気?・・・実は会社でやらかしちゃって、すぐにお金振り込まないと、オレ逮捕されるかもしれないんだ・・・」

そんな風にして、手当たり次第にリストにある年寄りに電話をかけていくのがオレの仕事。
これまでン千万という金をだまし取って稼いできた。
もっとも、稼いだと言ってもほぼすべて上納しなきゃならんのだけど。

気を取り直して今日も電話をかける。

「あぁ、もしもし、オレオレ」

「あんた、タカシかい!?」

「えっ、あぁ、タカシ・・・だよ・・・」(ビビったぁ~オレと同じ名前の息子かよw)

「おまえ、またなにか悪い事でもしたんじゃないだろうね!小学校でも中学校でもケンカばっかりしおってからに・・・」

「えっ、あぁ、あの時はごめんよ」(なんだよ、オレと同じようなことしてきたやつかよw)

「またバイク乗り回して事故ったんじゃないだろうね!　後ろに乗ってたリカちゃん、お前のせいで死んじゃったの忘れてないよねぇ!!」

「えっ・・・あぁ・・・」(ど、どうしてあの事故のこと知ってるんだ! リカの名前まで!!)

「婆ちゃんあの時約束したよね。今度やったら、婆ちゃんタカシのこと殺して、
婆ちゃんも一緒に死ぬって、言ったよねぇぇぇぇ!!」

「ひぃっ!!」ガチャン・・・あまりの迫力に、思わずこっちから電話を切ってしまった。

でも、たしかにオレの婆ちゃん、昔そんな事言ってたっけ。・・・もっとも、オレの婆ちゃんなら３年前にとっくに死んでるんだけどね。ははは・・・。

気を取り直して次のターゲットに電話をかけようと受話器を耳に当てる。

「タカシー!!　おまえだけは必ず婆ちゃんの手でかっさばいてやるけんのぅ!!」

切ったと思っていた電話はどうやら繋がったままのようであった・・・あの世と。