【short_31】狩の真実
投稿者:kana (210)
年の瀬も迫る12月15日、早朝午前4:00。凍てつくような寒さに目が覚める。
他の7人も既に起きて、薪ストーブに火を入れている。
今日は久しぶりのイノシシ猟だ。巻き狩りだ。心が躍る。
リーダーが指示しなくても3人の勢子(せこ)がビーグル犬を8頭連れて狩り宿を一足先に出る。銃はボルトアクションのライフル銃だ。弾は30-06。自動銃より軽いのが理由だ。
予備弾倉は持たない。5発あれば充分だ。水も弁当も余分な物は一切持たない。
わずかにチョコレートを2枚持つだけの軽装でイノシシを追う。彼らは犬よりも速い。
タツミ役の自分も位置に着いた。銃は散弾銃でアメリカ製のレミントン1100、弾は9粒丸。
50メートル以内なら確実にイノシシを倒す事が出来る。スラック弾は使わない。
「ダーン ダーン」勢子が撃った。かなり近い。
70メートル前方からこっちに向かってまっしぐらに突き進んでくるゲーム(獲物)。
距離30メートル「熊だ!」熊は私に気づいて直角に左に曲がった。
「しまった」引き鉄チャンスを逃がしてしまった。
すかさず左の空に向けて一発撃った。「そっちに行ったぞ!」
(ダン!ダン!ダン!)恐ろしいほどの速射だ、続けて(ダン!ダン!ダン!)
リーダーのカービン銃だ。30連装のマガジンをつけている。(違反ですが)
はずしたか、左のタツミをかわした熊は、その先の小沢(こざわ)に向かう。
「居た!」 反対側の小尾根の山肌で、熊はもがき苦しんでいる。
リーダーのカービン銃が久々にヒットしたようだ。
5丁のライフルが一斉に火を噴き、とどめを刺す。
熊を真ん中に8人が取り囲み銃弾の跡を調べる。
そこでひとつ不思議なことがあった。
なんと、熊の致命傷となったその銃弾の穴には、草の葉がしっかり詰まっていたのだ。
熊に近づいた者は誰もいないのだから、熊自信が自分で止血したとしか考えられない。
哀れな熊を目の当たりにして、我々の心の中でなにかが変化するのを自覚した。
kanaです。サッカー日本対インドネシアのハーフタイム中に投稿!
今回のお話は以前書いた7ページ物のお話「狩りの真実」を1ページに短縮したshort怪談となります。
今後、このように過去作で4ページ以上あるものはできるだけ1ページに短縮したものも挙げて行こうかと思ってます。短縮したのを読んでおもしろかったら、ぜひ長編の方も読んでみてくださいね。