サケクレー
投稿者:太山みせる (35)
百合は40代前半で、15年ほど付き合ってい
た彼氏の裕太に振られてしまった
ずっと裕太からのプロポーズを待っていたが何もないので、一度30代で自分からプロポーズをしたことがある
その時に結婚はしたくない、一生独身で誰かと一緒に暮らすのも嫌だから、結婚したいなら別れると言われたそうだ
結婚したかったが、裕太と別れるのは嫌なので、そのままズルズルと過ごして、気がついたら40を超えていた
時々結婚のワードを出してはみたが、その度に難色を示されて、百合はとうとう結婚を諦めた
恋人として会えるなら、それでも良いと思うようになったのである
百合は裕太を心底愛していた
だがそんなある日、裕太から別れて欲しいと告げられる
「済まない百合、たった1回だけ浮気をしてしまった
!浮気相手とはもう会っていないが、この間連絡が来て、妊娠したと言っているんだ!子供の為にも結婚するしかないから、お願いだから別れて欲しい」
2人は別れた
(今までのは何だったんだ……)
15年分の思い出がある
それなりに仲良くやってきたと思っていた
お互いの誕生日、クリスマス、バレンタイン…行事ごとに毎年イベントをやっていたではないか
当時の百合はアパートに一人暮らし、その部屋にも裕太の思い出の品はたくさん置いてあった
それを見る度、怒りが湧き上がる!そして悲しくなる
夜眠る前の酒量も増えた
仕事のミスも多くなった
もう何をやっても楽しくなかった
※
そんなある夜、いつものようにやけ酒をしていると、ベランダのカーテン越しに男と思われる人影が見えた
不審者かと思い、バッとカーテンを開けたら誰もいなかった
飲み過ぎによる幻覚かと思ったが、次の日も、そのまた次の日も毎晩同じことが起こった
しかも人影はだんだん濃くなっている
百合はあまり怖くなかった
悲しみが感情を薄くしたのだろう
何日目かの夜、そいつが喋った
『サケクレー』
見ると人影はしゃがみ込んで、ブルブル震えている
そして、低い押し殺したような声で、
『サケクレー』
と言っている
それしか言わない
百合はベランダのドアを開けた
開けると誰もいない
そこにコップに入れた清酒を置いた
ドアとカーテンを閉めると、ゴクゴク酒を飲むような音がした
翌朝、コップを見たら空になっていた
途中からミステリーみたいな展開になっておもしろかったです(kana)
ストーリーが面白かったです。
ただ、浮気された男と復縁し義母になって幸せと思うのだろうか🤔
怖い怖い怖い
前妻さんの死も、後添いになるその気持ちも全部怖い!
騙された人って自分が騙されたことを認めたくなくて認知が歪むんだって。裕太の心変わり(浮気なんかじゃない)を無かったことにするには今が幸せと思い込むしかないんだろうね、本人気付いてないだろうけどなんか憐れだ。