くるべという怪異

(この話は所謂自己責任系になっております。ご注意ください)

くるべという噂をご存知でしょうか？
ネットで調べても出てこないので私の住んでる地域のローカルな都市伝説なのかもしれません。なんなら地元でも違う年代の人は知らないことが多かったので本当に局地的なものだったと思います。
なのでもしこれを読んだ方で知っている方がいても、あまり具体的な地名や年代を出さないようご配慮をお願いします。

私は怖い話が好きでくるべについて調べてみたところ以下のことがわかりました。

くるべは人によく似た姿をしており、その姿は子供だったり青年だったり老婆だったりと人によって違って見えるそうです。特定の時間や場所に出る怪異などでは無いようで目撃談にも規則性はありません。
なのに何故見た人がそれがくるべだと分かるのかというと、くるべはそれは口元だけで笑ったような不自然な笑みを浮かべながら、こちらをじっと睨むような目つきで凝視しているそうです。それを不審に思いよく観察して見ると、その足元はまるで足首から180度曲ったかのように前に踵が後ろに爪先があることでようやくそれがくるべだと気づくのだそうです。

くるべに気づいてしまうとくるべはその不自然な足でヨタヨタと追いかけてきます。走らずとも早歩きで逃げられる速さではありますが、それが24時間ずっと追いかけてくるので最後はみんな追いつかれるか恐ろしくなりその前に首を括ってしまうのだとか……
くるべを見た、追いかけられたという体験談は大体の特徴や流れが一致しますが、くるべに追いつかれたらどうなるのかは不審死を遂げるだの次のくるべになるだの諸説ありどれが正しい情報かわかりませんでした。

そしてくるべはこれを聞いた人の前に姿を表すのだそうです。
正直この〆を聞いた時、最初はよくある怪談かと落胆しました。

けれどくるべが他の怪談と変わっている点は期限がないことです。
くるべは今追いかけてる人間に追いつくと、くるべを知っている人間の前に姿を出します。集めた体験談から察するにくるべを知った順番とは関連性がないようです。
そしてその人がくるべに気づかなければ次の人の元へ向かい、くるべに気づけば追いかけそれを繰り返します。

なのでくるべに会うのが明日なのか1年後か10年後か死ぬまで来ないのかわからないし、会っていても人通りの多い場所で気づいていない可能性があるのです。

私は少々捻くれているのでこの話を聞いた時は噂が広まるための工夫が凝っている割に広まってないなと少し馬鹿にしていました。ですが話を聞いてしばらくは人通りの少ない道を通ると「今くるべに会ったら気づいてしまうな……」と考えて少し怖く思って悔しかったのをよく覚えています。

それももう5年前の学生の頃の話で、私はすっかりくるべの噂など忘れていました。
ですが先日久々に会った地元の友人がくるべに会ったと言うのです。
正確には友人が妹と出かけた時に「さっきの人怖かったね…‥なんだったんだろう」と言われ、特徴を聞いたところくるべと一致していたそうです。幸い友人は人通りが多い道のため気づいておらず、友人の妹も目撃した時点ではくるべの噂を知らなかったので無事だったようですが。

その話を聞いて私は、くるべは噂を聞いた人以外にも見えるということは実在しているのか、そしてこの話を聞いて思い出した私は今後くるべに会ってしまったら気づくのではないかと恐ろしくなりました。

なのでこのサイトに吐き出させていただこうと文字に起こした次第です。
巻き込んでしまって申し訳ないですが、お互いくるべに会わずに済むこと、気づかずに済むことを心から願っています。