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不思議体験

YamaDさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

土砂降りを練り歩く何か
短編 2023/09/15 19:07 3,110view
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実害はなかったためつまらなくなるかもしれないことを先に伝えておく。

あれは大体3年半程前のことだ。

当時、年末に親父が癌を患い、家業の牛の肥育を父に代わって専業主婦の母と祖父の2人で行っていた。弟は地元の中学ではかなりキツい練習で知られるバスケ部に所属して日々ハードワークをこなしていた。自分は中学を卒業したてで、元は強豪の柔道部で柔道漬けの日々を送ってはいたが、受験期に入るとめっきり練習に顔を出すこともなくなった。運動部は特に共感もあると思うが、日常の運動量が減るとなかなか寝つきが悪くなる。例に漏れず自分も寝付きの悪さに悩むようになった。

実家は築100年超の母屋と後付けで増設された離れがある。人口肛門となった親父は寝床を母屋のトイレの前へと移し、離れではその父と祖父を除いた3人で寝ていた。寝付きの悪くなった自分とは裏腹に弟と母は日々の疲労から寝付きが非常によく、それに伴って2人のイビキも酷くなっていた。

そんな中自分はこれを夜更かしで凌ごうとしたがそれを母は許さなかった。

3月末のある日、やはり寝付く前に2人のイビキで寝付けないことを悟った私は深夜、そっと寝室を抜け出し、父の集めた単行本をひたすら読み漁った。

その日は雷も鳴る大雨でドアを開け閉めする音

程度ならかき消されて都合が良かったのだ。

「隣のイビキが治ったら戻ろう」

そう考えていた時だった。

家のすぐそこには東西に伸びる県道があるのだがその西側から2人組の男の話し声が聞こえる。

会話の内容までは雨音にかき消されて分からない。

「こんな深夜になんだよ。酔っ払ってんのか?」

珍しいこともあるなと思いながらも私は気にしなかった。

相変わらず大粒の雨の降り頻る中、声は段々と近づいてくる。だが相変わらず話の内容は雨音にかき消されて分からない。

「ぼちぼち後ろ通るな」

そう思ったと同時に嫌な予感がした。

その瞬間だった。

「オマンナドケンアッドネ?」

真後ろで壁を隔てても5〜6mの距離はあったはずの声が、自分が会話の中にいるかのように、自分の耳元で会話の息遣いそのままに聞こえた。

「聞き覚えのある訛り、俺話しかけられたのか!?」

ソレは今自分のすぐ隣にいる。

恐怖のあまり身体が硬直し、呼吸も荒くなる。

「俺、死ぬのか?」

そんな直感もした。

30秒にも満たない時間が10分以上の体感だった。

全身に力を込め、真横及び後ろを振り返る。

横には誰もおらず、外の電灯は濡れたアスファルトを照らしているだけだった。

身体中の力が一気に抜けた。

直後に気づいた。

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