蜘蛛の巣
投稿者:with (43)
中目黒のボロアパートに暮らしてた時の話。
当時の俺は社会人1年目は貯金しようと思って、手頃のアパートを選んだ。
築20年くらいの1DKの物件で狭いユニットバス。
隣の部屋の人のくしゃみとかケータイの振動が聞こえるくらい壁が薄かった。
別に日中は仕事で家には風呂入るか寝る為に帰るようなもんだから、全然気にしなかったが。
で、ある日を境に家の中に入ると変な感触を覚えた。
それは蜘蛛の巣に引っ掛かったような感触。
最初はゴキブリとか出るからそりゃ蜘蛛も出るよなと思って虫だけに無視してたんだけど、何かほぼ毎回家の中に入ると蜘蛛の巣に引っ掛かるわけ。
どんだけ蜘蛛いるんだよって思って、さすがに駆除しようと狭い部屋の中を隈なく探す俺。
でも、どんだけ隅々を確かめても蜘蛛はいなかった。
ゴキブリはいたから殺したけど。
だから、当時、長髪というほど長くはなかったが、耳にかかる程度に髪が伸びてたから、もしかして俺の抜け毛か?と疑った。
風呂に入るときに念入りに抜け毛をチェックしたが、原因は抜け毛じゃなかったが。
次の日も、家の中に入ると頬を伝うように蜘蛛の巣に引っ掛かったような感触があったから、目に見えない何かが確実に当たってるのは確かだった。
そんな奇妙な感覚をやり過ごしていると、ある日、同僚AとBの二人をボロ家に招いて飲み会をする事になった。
住んでる賃貸の話になって、俺が「俺のアパート、かなりボロいよ」と自傷気味に言ったのがまずかった。
同僚たちが「行ってみたいわ」と言い出して、仕事帰りにコンビニでビールと酒の肴を買って俺のアパートに向かう。
アパートに到着するなり、同僚の一人が「予想以上にボロっ」と笑ってた。
「うるせっ」と言いながら玄関を開けて同僚Aを招き入れると、Bが開いた玄関の外でじーっと部屋の中を見つめてた。
見つめるというか、放心状態?
「入れよ」と声を掛けても「え、あ、うん」と歯切れが悪いし、何か急に他人行儀になってたから不思議だった。
しかも、靴を脱いで部屋に上がると時、千鳥足なんだ。
「もう酔ったのか?まだ飲んでもねえのに」と笑ってやると、そいつは「ははは」と、あからさまに流そうとする。
こんな変な奴だっけと思いながらも、俺たち三人はバカ騒ぎする事もなく程ほどに飲みながら会社の悪口とか言い合って、すっかり出来上がってた。
それで、二人が帰る時間になった時、タクシー呼んだからタクシー来るまで酔い覚ましに外に出て喋ってたんだよ。
そしてたら様子がおかしかったBが突然「お前んち、事故物件?」とか言い出す。
「…は?違うけど」
「部屋に首吊った女いるよ」
マジで何でこのタイミングでカミングアウトするんだと思った。
Aも煙草吸ってたけど「ブフォッ」とか吹き出してた。
😱
まさに事故物件
奈落の底につきおとされた位の衝撃だったでしょう。もう暮らせません!
面白かったです
読みやすい。ひきこまれる。
文章がわかりやすい。
綺麗にまとまってて最近で一番おもしろかったです
漫才みたいなやりとり、何か軽快で気持ちよく読めました。面白かったです。ありがとうございました。