夜のお留守番
投稿者:鉄骨少女 (2)
これは30年以上前の話です。
父と母が離婚して間もない頃でした。
母は友達の紹介で古い一軒家を借り、当時小学生の私と幼稚園になる弟と母と3人で暮らす事になりました。
母は私たちを育てるため、夜、スナックで働き始めました。
当時は夜間保育などもない時代でしたので、夜は私と弟二人で過ごす日々が日常でした。
小学校高学年でしたが、やはり夜親が居ないのは心細いものでした。
それなので、夜8時ごろ出勤する母を見送ると、急いで寝てしまおうと、弟と二人で布団に入っていましたが、そう簡単に寝付けるものではありませんでした。
弟と布団の中で、もそもそと寝返りをうったり、羊を数えたりして過ごしていると、弟が「トイレいってくる」と起き上がりました。
弟が戻ってくるのを待っていると弟が真っ青になって走ってきました。
そして姉である私に抱きつき「家の外に女の人がいる」と言うのです。
用を済ませた弟が寝室に戻ってくる際、カーテンの隙間からふと外をのぞくと家の門の外に女の人が立っていたというのです。
私は怖がる弟を寝室におき、おそるおそる窓の外を覗きにいくとそこには、誰もいませんでした。
私は弟が何かを見間違えたのかと思い「大丈夫、何もいないよ」と安心させました。
しかし、事はそれでは済みませんでした。
その日から、数日おきに弟は女の人を見るようになったのです。
弟が言うにはその女は、どんどん近づいてきているというのです。
最初は門の外だったのが、数日後には門の中に入ってきていると言い、また数日後には玄関の前にいると言い、最終的には玄関に立っているというのです。
最初に弟が話した時は、私も見間違いだろうと思っていたのですが、どんどん近づいてくる目に見えない女に恐怖を抱きました。
最終的に家の玄関に立ってると言われたときは、半狂乱で弟を叩きながら、「何もいないじゃない」「何もいないじゃないと」泣きわめきながら、母の勤めるスナックに電話をかけて、母に助けを求めました。
泣きわめく私がちゃんと事を伝えられたかはよく覚えていませんが、ただ事じゃないと思った母は急いで帰って来てくれました。
後日、母が大家にその旨を話すと、以前その家の持ち主だった人の話をしてくれたそうです。
その家は大病院の院長の愛人が住んでいたそうですが、その家で自殺したという話でした。
当時事故物件という言葉もなく、大家もあまり気にすることなく、その物件を購入したようです。
しかし、幼い子供たちに怖い思いをさせてしまったと、引け目を感じた大家の計らいで、お祓いをしてもらうことができました。
その後弟は、その女を見る事はなくなったのですが、霊が見える体質になってしまい大人になった現在もそれは続いています。
今思うとその家に住み続けた数年はいじめにあったあり、母がストーカー被害にあったり、泥棒が入ったり、とあまりよい思い出がなく、お祓い後もまた別の霊が現れたりしたので、きっとそこはあまりよい土地ではなかったように思います。
現在、その家のあった場所にはアパートが建っていますがやはり空気と言いますか、雰囲気が暗く、何かしらの現象が今も続いているのだろうなと感じています。
「近づく」系は怖いよね。