ゴミ袋の中身

私がごみを出そうとした日のことです。

私の前にごみを捨てに来た男の人がいました。

髪が異様に長くて、一つにくくっているのです。

でも顔は普通の若い男性で、何をしている人なんだろうとちょっと気になってしまいました。

私が「おはよーございまーす」と挨拶すると、その人は逃げるように立ち去っていきました。

その人が残したごみはなんだか生臭いにおいがぷんぷんして、酷いにおいだなと思ったことを覚えています。

その一週間後に、私はまたゴミ捨て場であの男の人に会いました。

どこを見ているのか分からないような虚ろな顔をして、自分が捨てたごみをじっと見ているのです。

また私が挨拶すると、逃げるように行ってしまいました。

ゴミがあまりに臭くて、まるで腐臭みたいだと思いました。

そしたらごみ袋がわずかに動いたような気がして、私はぎょっとしました。

それを見たときに、私は生き物でも入っているのかと不安になりました。

しばらくゴミ袋の前で悩みましたが、何が入っているか分からないごみを開ける勇気がなくて、そこをうろうろしていました。

そしたら近くに住んでいる知っている顔の人がゴミ出しをしに来ました。

私はチャンスと思って、その人にうまいこと言って、ゴミ袋を開けてもらいました。

ものすごく臭いゴミだったので、その人もすごく嫌な顔をしながら開けていました。

そして袋の中身を見て私たちは青ざめたのです。

私が想像していたような生き物の死骸とかではなかったです。

それは大量の人形の顔でした。なぜか人形の顔がいっぱい捨ててあるのです。

それはそれはすごい光景で、思わずゾゾゾと何かが這い上がってくるような寒気を感じました。

すぐにゴミをくくりなおして、私たちは何も見なかったかのようにお互いに別れました。

いまだにあの腐臭が何だったのか分かりません。

無機質な人形の臭いでは決してなかったです。

あの髪の長い男性が何をしていたのか分かりませんが、私は今も見てはいけないものを見てしまったような気がしています。