ちりんちりんちりん
投稿者:ねこじろう (147)
俺がその格安の賃貸物件を見つけたのは一ヶ月くらい前のことだった、、、
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それは休みの日のこと。
人通りのほとんどない寂れた商店街をぶらぶら歩いていると三角屋根で木造二階建ての古い店があり、その閉じられたシャッターに、
「貸し物件 一か月一万円」
という貼り紙がしてある。
─これは安い!
と連絡先として書かれている携帯電話の番号にかけてみた。
すると男性がでて、
「きちんと家賃を払っていただけるのでいたら、いつでもどうぞ」
と言う。
気になったので、
「どうして、こんなに安いのですか?」
と聞いてみると、
この物件は以前着物屋で、元々はご両親でやっていたそうなのだが父親が早くに亡くなり、その後、母親が一人で店を回していたそうだ。
だがあまり商売は上手くいってなかったらしく、借金まみれだったらしい。
そして五年くらい前に突然母親が夜逃げするかのように、失踪したそうだ。
一人息子である男性は高校を出た後地元を離れ、今は大阪で会社員をしていたそうで、母親が消えた後どうしようもなく店を売りに出したのだが全く買い手が付かず、仕方ないので格安で貸そうということにしたらしい。
ということで、もと着物屋の建物に俺は住むことになった。
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建物は一階が店舗で、二階が住居になっている。
店舗はほとんど片付けられておらず、なんだか黴臭い匂いが漂っていた。
着物を着たマネキンが並べられてあり、壁沿いの棚には色とりどりの反物が重ねられている。
店舗の後ろ側は、上がり座敷になっていた。
上がり座敷の奥にあるレジの横に、以前ここを切り盛りしていた女性らしき人の写真が飾ってあった。
そこには七十歳くらいだろうか、薄い紫色の渋い着物を羽織り銀髪をまとめた、品の良さそうな女性が写っていた。
恐らくこれが家主の失踪した母親なんだろう。
二階の住居は六畳一間の和室に、台所とトイレ、風呂があり、普通に生活するのには全く支障はなかった。
ただ建物自体はかなり古くて、冬の寒い季節とかはどこからか隙間風が入り込んできて、暖房をしていても中々暖まらなかった。
俺はこの着物屋からすぐ近くの居酒屋の店員をしており、毎日帰ってくるのは十二時過ぎで、家は
ただ寝るだけのためにあるような感じだった。
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警察に通報した後が大変気になります。