バスから降りたら知らない町だった
投稿者:すもも (10)
私は田舎育ちで実家は山間にあります。
学校までは数時間に一本しかない早朝のバスに乗り込んで、帰りも数時間に一度地元に向かうバスを待って帰る。
そんな高校生活を送っていました。
ある日、午前中の授業で学校が終わった時のこと。
私は運よく昼のバスに間に合い乗車しました。
平日の昼間は人の利用も少なく、ましてや私の地元に向かうバスの乗客は私を含めて七人程度だったと思います。
いつも朝早く家を出る私は、地元のバス停に到着するまでの45分程度の道中を仮眠する事に決めていて、この時も静かな街並みを窓辺から眺めながらうとうとし、気が付いたら深く眠り込んでいました。
『次、停まります』
そんなアナウンスで起きた私はキョロキョロと辺りを見回すと、七人いた乗客は私を含めて三人に減っており、正面の電光掲示板というのでしょうか、次のバス停を表示させる電子の文字列を確認すれば見た事もないバス停の名を表示させていました。
色んなバスに乗った経験はありますが、表示されるバス停の名に見覚えもなく。
私は何処か辺鄙な場所に行ってしまう前に一度ここらで降りようと思い、ブザーを押しました。
『次、停まります』と運転手がアナウンスをすれば、私は窓越しに見覚えがある施設や道は無いものかと、前のめりで街並みを観察します。
けれども、この辺りは私の地元に負けず劣らずの田舎で田園風景というか、山や雑木林といった自然に囲まれた景色しかなく、建物も小屋のような見た目のものがちらほら見える程度でした。
『やばいなあ、どこだろう此処は?』
バスが停まり、鞄を担いで立ち上がると、なぜか残りの乗客の二人も立ち上がって私に続き下車します。
別に意識するほどのことでもありませんが、知らないバス停に一人降りるよりかは幾分か心強く思えました。
私達を降ろしたバスはそのまま何も無い山間の道を静かに進み、やがて背景へ溶けていきました。
私はというと、バス停に建てられた時刻表を確認。
時刻表はほとんど白地に占められていて、進行方向上の次のバスは早くても四時間後。
では逆方向のバス、つまりは街へ出る反対方面のバスは何時間後に来るのだろうと思い反対側の道を見やると、どこにも時刻表の案内板はありませんでした。
『あれ?バス停どこ?』
背伸びしてあっちこっちを見渡してみても、やっぱりどこにもバス停はありません。
これじゃあ、どうやって街に引き返せばいいんだろうと考えていると不意に声を掛けられました。
「すみません、ここが何処かわかりますか?居眠りしてしまって…」
振り返るとそこには腰の曲がった背の低いおばあさんが居ました。
白髪頭のおばあさんはオドオドと周りを見ては困った顔を浮かべていて、私は瞬時に私と同じ境遇の人だと理解できました。
「あ、すみません、実は私も居眠りしてて。慌てて降りたら、その、逆側のバス停が見当たらなくて…」
反対方向のバス停が無いことを伝えると、おばあさんは「ええ?」と半信半疑な顔を見せましたが、見て分かる通り私達が降りたバス停以外、どこにも時刻表が無いことを知ると落胆と諦観を織り交ぜたような複雑な表情を浮かべました。
一先ず目の前の時刻表に何か詳細が書かれていないか確かめようと提案すると、おばあさんは「そうですね」と不安そうについてきました。
昭和チックなオンボロな木造りのバス停。
赤錆だらけの時刻表を見上げると、やっぱり片道分の案内しかありません。
小さな文字を一つも逃さまいと人差し指でなぞり確認しましたが、どこにも片側の案内は無く、私は途方に暮れました。
読み応えがあり引き込まれました。とても文才がおありと存じます。
眠りがスイッチになって、不思議な世界が同時間軸に存在しているのかも?という好奇心が刺激されました。
電車やバスなど交通手段で意図せず異世界に移動してしまったお話は、きさらぎ駅同様、とても興味深いです。
きさらぎ駅と同じ太鼓の音。
3人とも無事に帰還され良かったです。
こういう話わくわくするね
おばあさんは平屋で待っていて、無事だったのか気になる…
これ映画の「きさらぎ駅」と、ほぼストーリー同じじゃない?
単に電車がバスになっただけで。
きさらぎ駅と違ってハッピーエンドで良かったじゃん
その場所、何か曰くみたいなモノがあったりするのかな? それで白昼夢みたいなものを偶々、寝ていた三人が魅せられたみたいな事なのかな、と思ってね。 なんか、現代回顧版みたいな話しだよな〜。
展開に無理がなく、情景が浮かんできます。
おいおい、運転手に聞けよ。ってか、一番怪しいじゃん。
引き込まれました。どういう展開、どういう結末なんだろう・・・と。読んでいてここまでドキドキするのは私としては珍しく、久々に良質の怖い話を読ませて頂きました。ありがとうございました。
とても面白かったです
やっぱ異世界があるとしてもこんな感じに似てるけど常識が全く通じない異様な場所なのかな
あんななろう系のファンタジー系じゃなく
面白かった。
唯一思うのはその状況だったら最後3人で大騒ぎするでしょ
そそくさと降りるかなぁ
おっさんの意図が気になるな
最初は危害を加えようとしてるのかと思ったけど、村民達は三人が来てる事を聞いてなかったっぽいし眠らせて家から出ないようにする事で夜現れる村民達と遭遇させないよう守ろうとした可能性もある…のか?