松葉杖の女の子
投稿者:ぴ (414)
少し遠くの公園によく甥っ子を連れていってあげていたことがありました。
看護師である妹がすごく仕事が忙しいときがあり、その時期にどうか見てほしいと頼まれたのです。
私は結婚して仕事を辞めてからはずっと主婦だったので、時間の余裕がありました。
けれどなかなか子供に恵まれず、代わりに甥っ子を猫かわいがりしてきたのです。
甥っ子は子供にしてはすごく聞き分けのいい子で、親が忙しくて帰りが遅くても文句ひとつ言わない子でした。
ただ公園に連れていってあげたら、すごく喜んで遊んでいたのです。
両親共働きでいつも一人でいることが多いので、きっと同年代の子たちとみんなでわいわい遊びたかったんだなと思いました。
それで私はなるべく時間があれば公園に連れていってあげるようになりました。
いつものように甥っ子を公園に連れていくと、みんなが遊具で遊んでいる方に喜んで走っていきました。
そして遊具で遊ぶ甥っ子たちを見ていたときに、気になる子を見つけたのです。
それは公園の遊具の前で、松葉杖をついて歩く女の子なのです。
どうやら足が不自由なせいで、子供たちの輪の中に入れないように見えました。
あまりに羨ましそうに甥っ子たちが遊ぶ様子を見ているので、私は可哀そうになってしまいました。
そして女の子に近づいていき、声をかけたのでした。
「お母さんと来たの?」と私は声をかけました。
そしたら女の子はこっちを見て、首を振ったのです。
公園で遊んでいる子たちの近くには、必ず誰か保護者がいるのに、その子の近くには誰も寄り付かなかったです。
だから保護者が近くにいないなんておかしいなと気になっていました。
「誰かに連れてきてもらったの?」と聞いても、女の子は首を振り、反応から見るに、どうやら公園には一人で来たらしかったです。
松葉杖をついて歩く姿が痛々しくて、私は思わずベンチに座るように言いました。
女の子は少し迷って、私と一緒にベンチに座ったのです。
そこでいろいろ話を聞いてみたら、しばらく前に交通事故に遭ったせいで松葉杖をつくようになったらしかったです。
「痛かったでしょう」と私が心配すると、「痛くはなかった」と言いました。
どうやら女の子は痛みよりも怖かったらしいです。
急に車が迫ってきて、衝撃があって怖かったと言いました。
まるでその日の交通事故を思い出したかのようにブルブルと震えていて、可哀そうでした。
まだ公園の遊具で遊べそうにはない様子を見て胸が痛くなり、「みんなが帰るまでおばちゃんとお話していよう」とその子とずっとおしゃべりしていたのです。
夕方になってきたら、ちらほら公園にいた人が減っていきました。
そろそろ夕飯の時間だし、私も帰らなきゃと思って、滑り台で遊んでいた甥っ子を呼んだのです。
そろそろご飯からとベンチに座るその子に言ったら、その子は少し寂しそうでした。
ご冥福をお祈りします。
突然の出来事で、きっと、死んだことに気付いていないから成仏出来ていないだけですよ。
お寺に連れて行ってあげたら良かったのに。
不思議な、でも、あったかい気持ちなりました。