娘の涙
投稿者:不忍 (1)
短編
2023/01/30
08:43
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これは私が家のリビングで、娘とジャンケンをして遊んでいる時の話です。
平日の昼間、テレビを見ることにも飽きてしまった娘と一緒に、夕飯を作る時間になるまでの間ジャンケンをしていたのですが、ふと娘の目線が私たちの手元ではなく、私の後方へと向きました。
一瞬は私の方を見ているのかと思ったのですが、どう考えても私と目線は合っておらず、更にその時の娘は大きく目を見開いてとても驚いたような表情をしていて、私が話しかけても言葉一つ返ってこないほどにとある一点を見つめていました。
心配になった私は娘の頬を包み込んで、名前を数回呼びました。
すると娘は突然「こわい!こわい!」と怯え叫びながら、火が付いたように泣き始めたのです。急なことに驚いた私は娘を抱きしめ、ただあやすことしか出来ませんでした。
暫くすると泣いていたのが嘘のようにケロッと機嫌が直ったため、その時はただ癇癪を起こしたか、虫かなにかを見つけたのだと思っていたのですが、後日、娘の目線が向いた方角でお葬式が執り行われていたことが判明しました。
元々人懐っこい性格の娘は亡くなったご老人とも仲が良かったので、もしかするとあの世へ行く前にと娘へ挨拶をしにきてくれたのかもしれないと思うと、怯え泣き叫んだ娘の様子が少し、申し訳なく感じてしまいました。
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