温かみのあるネックレス
投稿者:窓際族 (47)
「このネックレスおかしいんです。視てもらえませんか?」
そう切り出した女性は、茶髪で少しヤンキーっぽい雰囲気があったものの美形だったそうだ。
そして彼女が差し出したネックレスは古びたもので、くすんだ金色のチェーンには小さいながらもダイヤモンドが付いていたらしい。
「このネックレスはどこで入手されたんですか?」
「家の物置で見つかったものなんです。母に聞いても何も覚えてないと……」
このネックレスを前に、霊感があることで知られているH先生は首を傾げたそうだ。
ネックレスから嫌な感じはまったくしない。
むしろ暖かな感じすらする。
だが、女性はこのネックレスは何か呪われているんじゃないかと言う。
これを付けると、決まっておかしなことばかりが起こるというのだ。
電車を逃して約束の時間に遅れる、変なオッサンに絡まれるなんてことは序の口。
信号待ちをしていたらスクーターが突っ込んできた、店で万引きと間違われた、財布をスられたなんてこともあったのだという。
普段はこんなことはないのに、どうしてこれを付けた時だけこんなことになるのか。
このダイヤは呪いのダイヤなんじゃないかと彼女は言うが、H先生はそれは違うと思った。
しかし違うと直感的に感じ取りつつも、そういったことがどうして起こっているのかまでは分からなかった。
後日。
彼女とばったり会ったH先生は、彼女からこんなことを聞かされたそうだ。
母が酔っている時にあのネックレスについて問い詰めると、それはどうやら、昔、兄がかっぱらってきたものらしいということが分かったと。
それは形見の品だったらしく、持ち主の女性はお金なら払うから返してくださいと来たようだが、そんなもんは知らんと突っぱね、かといって売ったり付けたりするわけにもいかずずっと長い間物置に眠っていたのだそうだ。
彼女はこんなことも分からないなんて霊能力者も大したことないわねと言っていたが、H先生は二重の意味で怖くなった。
彼女はすでに、そのネックレスをネット経由で売ってしまっていたからだ。
人としてどうなのよ。それ。