事故物件のその後
投稿者:take (96)
先輩のYさんに聞いた話です。
Yさんが小学生の頃、住んでいた団地で無理心中事件がありました。
ノイローゼになった母親が、まだ幼い子供の首を絞めて殺害、その後、自分も首を吊っているのを、帰宅した夫が発見したそうです。
しばらくして夫も行方不明になり、その後の入居者もありませんでした。
Yさんの部屋とは別棟でしたが、Yさんの部屋から問題の部屋がちょうど見えるのです。
カーテンも取り払われ、家具もなくガランとしている部屋の内部まで見てとれたそうです。
ある日、Yさんがなんとなく目を向けると、部屋の中に母親らしき女性と子供が微動だにせず、立ち尽くしているのを目撃しました。
Yさんだけではなく、他の住民からも、
『死んだはずの親子が、あの部屋の窓から顔を出しているのを見た』
『深夜歩いていて、視線を感じて見上げると、あの部屋のベランダから親子がこちらを見下ろしていた』
『誰もいないはずなのにベランダのサッシを開け閉めする音がする』
という声が多くなり、その部屋の窓という窓はすべて板で塞がれ、ベランダもシートで覆われました。
それでも不審な物音がするという噂は耐えなかったそうです。
Yさんが中学校を卒業した時に引っ越したそうですが、そのときまで入居者はなかったそうです。
「もう三十年近く経つけど、いまもあのままなのかな。なんとなく確かめに行きたい気もするけど……」
と、Yさんが遠くを見つめるような目をして言うので、
「見にいくんですか?」と、私が聞くと、
「いやあ、そりゃ悪趣味にすぎるだろ」と、苦笑していました。
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