不幸のクローバー

ほんの2年ほど前の話です。

私の友達Mは四葉のクローバーが好きで、よく群生地に行っては四つ葉を探して「幸せ見つけた～」なんて言って喜んでいました。

私はそういうのに興味がなかったけど、あまりに友達が好きなので探すのを付き合ってあげることはありました。

そんな友達が2年前に突然亡くなったと報告を受けました。

原因が不明で、お風呂で大好きなクローバーを握ったまま亡くなっていたのだそうです。

昔から特に持病があるなんて話も聞いたことがなかったし、なんで亡くなったのか不思議に思っていました。

友達のお葬式に参列したときに、友達の母から渡されたのが亡くなったときに持っていた不思議なクローバーだったのです。

幸せの四つ葉のクローバーではなく、それは双葉でした。

千切ったような形跡はなくて、もともと双葉なのかなと思う不思議なクローバーでした。

正直亡くなったときに持っていたもので気味が悪かったし、四葉のクローバーなどを信じない私は少しも欲しくなかったけど、「娘の形見だから」と言われたら、断りきれなかったです。

それを持って、お葬式からトボトボ帰っている途中でした。

私は後ろから変な足音がするのに気づきました。

誰かに付けられている感じがして、怖くなって夜道を走り出しました。

目の前の横断歩道が青で、私はそのまま突っ切ろうとしたのです。

そしたら寸前で赤になってしまって、ギリギリで踏ん張りました。

ほっとしたのも束の間で、私はそのとき後ろからズンと誰かに背中を押されて、思わず道路に数歩出てしまったのです。

びっくりして振り向くと、そこには死んだ友達が笑っている顔が見えました。

そのあと衝撃と暗転。交通事故で意識不明になり、生死を彷徨いました。

気づいたときには病院のベッドで、私の目が覚めると母がわっと泣き出し、家族に抱きしめられました。

私は友達のお葬式の帰り道で、交通事故にあったみたいでした。

聞いた話では、私が突然車の前に飛び出してきたらしいです。

あの日手に握っていた双葉のクローバーは車に轢かれて、ずたずたに引き裂かれてしまったと聞きました。

私の母は「きっとMちゃんが助けてくれたのね」と美談のように話しています。

だけど、私は見たのです。

私を道路に突き飛ばして笑っていたのは死んだM本人でした。

私はあのクローバーは幸せのクローバーなんかじゃなく、不幸のクローバーだと思っています。

死んだMに何が起こったのか分かりませんが、きっとあのクローバーが関わっていると私は思っています。