不気味な姿のサンタさん

私はクリスマスにサンタさんを見たことがあります。

定番の、父親が仮装してサンタさんになっている姿を見たわけではなく、クリスマスの日に家の外で両親の帰りを待っているときに見ました。

私の前に赤い服を着て、真っ白な袋を引きずっているサンタさんが通りかかったのです。

まだ子供だったので、不審な人だと思いませんでした。

クリスマスの日だったので、サンタさんがみんなの家にプレゼントを配って回っているんだと思いました。

私が目を大きくして声をかけると、サンタさんはぎょろっとした目でこっちを見ました。

そして私に「み、みえるの？」と聞いてきたのです。

今考えるとすごく不気味な顔だったし、赤い服はなぜかテラテラと光っていて生々しい赤でした。

まるで血でも被ったかのようだった気がするのです。

サンタさんはしばらくこっちをじっと見て、何か考えていました。

袋の中はとても大きなものが入っていて、しかもなんだかごそごそと動いているように見えるのです。

思わず私は「動いてる」と言いました。

袋の中から小さい声で何か叫んでいるようにも聞こえて、私は耳をそばだてました。

「助けて」って聞こえた気がするのです。

サンタさんは私に近づいて来ようとしました。

私はその気迫に少し怯んだのです。

だけど、丁度そのときに両親の車の音がして、サンタさんは動きを止めました。

そして一瞬迷ったようにこっちを見て、闇の中に消えてしまったのです。

子供の頃のことだったので、私はそのあと興奮気味に「サンタさんを見た」と両親にその話をしました。

だけど、両親は夢の話だと思ったそうです。

今でも詳細にあのときの記憶は残っています。

子供の頃はずっとサンタさんだと思って疑わなかったけど、今はもしかして違ったんじゃないかと思うのです。

袋の中のプレゼントはずっとごそごそと動いていました。

今思い出しても鳥肌が立つくらい不気味なサンタでした。

あの袋の中身は、なんだったのでしょう。

考えれば考えるほど怖くなります。

そしてもしかしたら私は本当にギリギリ助かったんじゃないかと思っているのです。

あのときに両親が車で帰ってこなかったら、私は近づいてきたサンタさんに何をされていただろうと想像して怖くなることがあります。