「幸せになること」は最高の復讐なのか？

今回はとあるいじめられっ子と、パワーストーンについてのお話です。
なお関係者から了承は得ておりますが、話の本質を損なわない程度にフェイクが入ることをお許しください。

さて、このお話の主役は当時高校生だったSさんです。
彼女の通っていた高校は、その周辺では非常にカオスでフリーダムであるということで知られていました。
授業をまともに聞いて勉強している真面目くん・真面目ちゃんなんて少数派。
学校にお菓子やゲーム機、ケータイを持ってくるなんてかわいい方で、集団での殴り合い、リンチ、カツアゲなどもう何でもアリだったそうです。

こんな環境だったからかSさんを苦しめていたいじめもだいぶひどいもので、ほぼ全てが普通に刑事事件レベルとしか言いようのないものでした。
ひどい時には骨折させられたりひどいアザができたりしたこともありましたが、当たり前のようにいじめっ子へのお咎めなんかほとんどなし。
ゆえにSさんはいじめっ子と真面目にいじめ対策に取り組まない大人たちは死をもって償うべきだと考えており、そのために黒魔術の勉強をし、また学生には不釣り合いな額のお金を用意してもいました。
聞けば、そのお金は魔術を使って引き寄せたものなのだとか……。

私は、彼女が必要としているのはウチのパワーストーンブレスレットではないかもしれないと感じました。
というのも彼女の意志やエネルギーの強さは段違いで、並大抵のものではついていけないと思ったからです。
よって私はパワーストーンブレスレットを作る代わりに、彼女の話を聞き、良さげな組み合わせや使い方についてアドバイスしました。
幸いにも彼女はもうすでにパワーストーンについて多くを学んでおり、相談はとてもスムーズにいきました。

ちなみにその内容としては大さっぱにこんな感じです。
メインの石は高い防御力で知られるブラックオニキス（黒メノウ）。
サブとしては負の感情やトラブルに強いジェット（黒玉）、汎用性が非常に高い魔除けの石ラピスラズリ、困難を跳ねのける強磁気ヘマタイトなど。
もうすでに大きく膨れ上がってしまった悪意を跳ねのけるのに十分な守りを実現するために基本的には守備力特化の組み合わせになっています。

一方、いじめや犯罪まがいの行為が普通に行われているような環境においては悪意を持つ人間が自らの悪しきエネルギーで自滅することはあまり望めないもの。
そこで悪意を本人に返すためのモリオン（黒水晶）と黒針ルチルも導入しました。

まあ、本来はいじめっ子の排除は大人がやる仕事なんですけどね。
しかし大人がその仕事を放棄しているのであれば、他の誰かがやるしかありません。

ともあれ彼女は自分で見事なブレスレットを組み、マジックオイルまで自作して聖別し、それをうまいこと隠し持って登校するようになりました。
その結果は激烈なものでした。
まず、担任の教師が交通事故に遭って負傷。
生徒より先に教師の方が””罰せられた””のにはSさんも私も驚きましたが、確かに考えようによってはクラス中のトラブルを放置している「クラスで一番悪い奴」なので妥当なところなのかもしれませんね。
命に別状はなかったそうですが、入院は結構長引いたと聞いています。

Sさんをいじめていたグループのリーダー格が””罰せられた””のは、その次のことでした。
万引きがバレて通報されて……というのは特に珍しい話でもなかったのですが、その時の警察官が有能な人だったようで、なんとSさんが想像すらしなかったような余罪がポロポロ出てきたのだとか。
驚くべきことに上級生の男子に「人体実験」と称した拷問じみたことまでやっていたらしいです。
ツッコミが追い付かないしフィクションでもそこまでのことはなかなかしませんよね……。