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不思議体験

湯浅先生さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

最南端から呼ばれた話
短編 2022/10/28 03:12 2,730view

私には、中学生くらいから、ちょっと変わった能力があった。

全く面識のないネットの友達の亡くなったお父さんの手紙の場所を当てたり、5分後の未来が勝手に見えたり、年下男性上司の亡くなった祖母の方が来て、延々と孫がどれだけいい子か話を聞くとか。それも仕事が終わってから。どっかから、話せる者がいると分かると集まって来るのか、引っ切り無しに来る時は来た。その中でも、まさか1人で最南端に行く事になるとは思わなかった。

不思議な夢は2ヶ月前から始まった。大きな三角形の岩の側に真っ白い着物を着た人間のような者が見えた。男性のようだった。
1週間後また別の岩の側で、白い着物の女性が『もうすぐ会えますね』と言っている夢を見た。

何だろうと思っていたけれど、特に気にしないでいると、滑って転び、左半身を強く打ってしまった。足と膝と腰を酷く打ってしまったのだ。

次の日、たまたま飾ってあった、誰が作ったか分からない、貰ったシーサーを見ると、左半身が緑色に変わっていた。元々、赤茶色の土で作ってあったのに、私が強く打ったところだけ、ハッキリと色が変わっていた。

流石にゾッとして、その岩を調べてみると斎場御嶽という場所だと知った。

1人旅で沖縄に行く事になるかもしれないとは、思わなかった。もし帰って来れなかったら、という話をし過ぎて周りを引かせまくった。高所恐怖症で飛行機も1人で乗った事ないのに、いろんな人に助言を聞いて、スカイチケットを夜中に必死で取り、3時間も前から羽田空港で待機して、夕方沖縄に着いた。空港食堂で沖縄そばを食べて寝た。

次の日、那覇ターミナルに行く途中で迷い、大きな木が祀ってあって、シーサーが居た。男の人が手を合わせていたので、私も無事を祈った。東陽バスに乗り1時間15分かかって斎場御嶽のバス停に着いた。降りると蒸し暑く、雲一つない真夏の太陽が降り注ぎ、蝉が沢山鳴いていた。

300円払って入場券を買い、工事中の道路を渡り、ポカリスエットを片手に坂を登って行った。入り口で券を渡し、ビデオを見た。見終わって、歩いて行くと、最初の階段があった。

ふと見ると、白い蝶が飛んでいた。片足に蜘蛛の巣が付いていて、ゆっくり上昇して飛んでいた。登って行く間ずっと付いてきた。地図を片手に1箇所づつ丁寧に見て回った。

三角形の岩の前に来ると蝶は居なくなっていた。上を見上げると、綺麗な真っ白いレースのような、羽のような物が見えた。何かが側に来て、大きな羽に包まれたと思った時、色んな悩んでいた事がスーッと引いて行った。引き潮のような静けさで引いていった。その中で、ただ、綺麗な羽だけが見えた。

ほんの一瞬だったのかは分からなかったけれど、岩から離れると、蜘蛛の巣が付いた蝶がまた付いてきた。最初の階段まで来ると、蝶は私の側を漂っていたけど、もう帰るよ、と私が言うと、ゆっくり上昇して他の蝶の側へ行った。

沖縄から帰って来ると、何人かの人は、私の事を何か変わったと言った。私はそうかもしれない、と言った。また夢を見た。私の背中にレースのような羽が生えた夢だった。

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