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心霊

窓際族さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

橋から飛び降り生還したAさんが見たもの
短編 2022/10/26 20:52 5,124view
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東京都H市に住むAさんは、夫との最期のやりとりをとても後悔している。
夫はかつて、とある大企業に勤めていた。
リーマンショックによって転職を余儀なくされた中、必死につかみ取った大企業の椅子には夫婦共々最初は喜んでいたが……
職場の人間関係や雰囲気は驚くほど悪いものだった。

Aさんの夫は「多くの人が知る企業なのになぜ」という思いを抱きつつも、社会とはこんなものだと言い聞かせながら働いていたらしい。
しかし度重なるサービス残業、執拗な叱責、LINEでの晒し上げ、幼稚な嫌がらせなどを受け、次第に様子がおかしくなっていった。
穏やかで優しかったAさんの夫はどんどんトゲトゲしくなり、しまいにはAさんに暴力を振るうまでになったそう。
とはいえこのご時世としては給料は悪くなかったし、社会的な地位も悪くないとあってかAさん夫婦は我慢していた。
しかし、その我慢にも限界があった。

「もうこんなの耐えられない! 離婚するから!」

「ああやってみろよ! ロクに働きもしねえ、税金も納めねえ寄生虫のくせに!」

これが夫との最期のやり取りになった。
翌朝、Aさんは2つの電話を受けることになった。
1つはAさんの夫が会社に来ていないという連絡。
もう1つはAさんの夫が電車に飛び込んで死んだという連絡。
Aさんは何も考えられなくなった。
これが全て悪い夢であってほしいと思った。

しかし現実は甘くはない。
Aさんに追い討ちをかけるように2つの損害賠償請求が飛んできた。
1つは鉄道会社からのもの。

そしてもう1つはAさんの夫が勤めていた会社からのもの。

別に数億円単位というわけではなかったが(そもそも一般人に払えるものでもないだろう)、Aさんにはそれらを支払う術はなかった。
なのでAさんは相続放棄をして、Aさんの夫の財産の相続権とAさんの夫が発生させた全ての負債に対する責任を放棄した。
まずはこれでAさんは夫名義の車や住まいを失った。

さらに夫がいなくなったことで、Aさんは世間からの信用をも失った。
経済力を担保できる男がいないとなると家を貸してくれるところも、仕事を与えてくれるところもなかなか見当たらない。
結局Aさんは東京都H市にある実家に帰らざるを得なかったが、両親は年金暮らしで2人暮らしでさえ余裕があるとは言えなかった。

もちろん、それからは苦しい日々が続いた。
結婚していた時とは違い、独り身の女はあらゆるシーンでナメられる。
無論Aさんは安くてキツい仕事を転々として少しでもお金を作ろうとしたが、それでAさんは心身を大きく消耗していった。

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コメント(3)
  • 深いですね。

    2022/10/26/21:20
  • リーマンのせい。

    2022/11/05/19:10
  • 怖くなかった。自分自身を考えさせられる内容だった

    2023/05/25/09:36

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