夜中に来た兵隊さん
投稿者:かなかな (1)
はじめまして。都内で介護福祉士をしているK子です。これは私が介護士として、とある老人ホームで働き始めたばかりの頃のお話です。
老人ホームは24時間交代制で夜勤もあります。 夜間は入居者さんが寝静まるため、普段はワイワイ賑わっている食堂や廊下なども、真っ暗で静まり返っていて、独特の不気味な雰囲気があります。
ある夜勤の日、先輩職員が休憩中に、Aさんというお婆さんからナースコールがありました。 普段は朝までぐっすり寝入る方で、ナースコールを押すことはあまりないので、不思議に思ってすぐにお部屋へ向かいました。
ドアをそっと開けて、「Aさん?どうしました?」と声をかけると、そこにはベッドに座ってひとりでゲラゲラと笑っているAさんの姿が…。 「あっはっは、そうだねぇ」と誰かと会話しているようです。しかし当然、部屋にはAさんの姿しかなく……。 「Aさん?」と改めて声をかけると、私に気づいたAさんがにこやかに一言。 「ああ、お姉さん。こちらの兵隊さんに、お茶をお願いします。」
……当然、私には兵隊さんなど見えません。 Aさんがあまりに当たり前のように仰るので、動揺しながらも「わかりました」と声をかけて一旦退室しました。 怖すぎて見て見ぬふりをしたかったのですが、ベッドに座ったままのAさんをそのままにしておくわけにもいかず、どうしようかと悩んでいるところに、先輩が休憩を終えて戻ってきました。
「今、こんなことがあったんですけど……。」と怯えながら報告する私に、先輩が気にも留めずに言いました。 「ああ、Aさんのお兄さん、戦争で亡くなったらしいから。会いに来たのかもねぇ。」 なるほど。そう考えると少し恐怖も和らぐ気がします。 しかしすっかり怖くなってしまった私は、その後の対応を先輩にお願いして、別の方のお世話に行かせてもらうことにしました。
先輩いわく、もう一度部屋に行ったら兵隊さんはいなくなっていたそうで、Aさんに寝るように声をかけたら、そのまますんなり寝てくれたそうです。 ホッとして先輩にお礼を伝えると、 「こんなんでビビってたら夜勤できないよ〜(笑)亡くなった入居者さんとか、しょっちゅうウロウロしてるから(笑)」
……先輩の冗談だろうと聞き流しましたが、その後も亡くなったはずの入居者さまの部屋から、何故かナースコールが鳴ったりと、この業界には怖い話がたくさん存在しています。
兵隊さんが
弟に会いに来たのであります。