自殺の理由

今は亡き伯母から聞いた話

伯母の中学時代の同級生にAという男の子がいた。とても快活な子でみんなに好かれていたそうだ。
だがAは突然自殺してしまった。遺書は無かったが、家族の見ている前で唐突に叫び出し、事件当時住んでいたマンションの部屋の窓から飛び降りてしまったらしい。
伯母はクラスメイト達とお通夜に参列した。みんな泣いていたが、伯母はそんな中でAの弟がずっと俯きながら何かブツブツ呟いているのが気になったそうだ。
大切な家族が突然自殺したのだから、何か思うところがあるのだろう。そう思った伯母はお通夜の後、Aの弟に声をかけた。
弟くんのせいじゃないよ、気に病まないで。伯母としては励ますつもりだったが、Aの弟は驚愕した様子で伯母を見返すと、ボロボロと泣き出した。
その時、伯母は初めてAの弟が何かを握りしめていることに気がついた。
それは1枚の写真だった。
Aの弟は泣きながらこう言ったそうだ。
「違うんです、僕なんです。僕が遊び半分で友達と心霊スポットなんかに行ったから…兄ちゃんは何もしてないんです、なのに何で兄ちゃんなんだ…」

伯母はAの弟に頼んで写真を見せてもらった。部屋の中で撮ったらしいその写真は日付から見てAが自殺する前日のもので、真ん中でピースをするAに覆い被さるように真っ黒な人影が映り込み、背後の窓には一面に黒い手形が付いていたそうだ。