ホームレスの鋭い直感
投稿者:窓際族 (47)
私の知人Mは女性でありながらホームレスをしていた時期があります。幸いなことに今は家も仕事も手に入れて豊かな生活を送っていますが、それでも彼女は酒が入るとホームレス時代にあったことを懐かしがって話してくれることがあります。食べるものもお金も着るものも横になる場所も何もなくて苦しかったけれど、あまりに自由だったがゆえに慣れ過ぎると抜け出せなくなると思ったのだとかなんとか……。
それはさておき。私は彼女から、こんな不思議な話を聞いたことがあります。それは彼女がとある大きな公園でブルーテント生活をしていた時のことです。Mはある夜、仲間たちと公園で酒を酌み交わした後睡眠をとるためにそれぞれのテントへと戻りました。仲間といっても大部分はお年を召した男性で、女性は1人もいなかったそうですけどね。しかしテントに帰った後、妙な胸騒ぎがしたのだそうです。言葉にするなら仲間の一人がこのままだと危ないかもしれない、しかし理由は分からないというような。ところが彼女は、昼間の仕事の疲れや酔いもあってそのまま何もせずに眠ってしまいました。ちなみにこれを聞いて「なぜホームレスが仕事を?」と思われるかもしれませんが、実は少なくないホームレスが仕事をしています。そりゃあ、お金が無かったら食べ物もお酒も買えませんからね。それに毛布やブルーシート、虫除けなんかも欠かせない生活用品です。
ともあれそうして迎えた翌朝、Mはショックを受けました。昨日危ないと薄々感じていた仲間が酒を飲んだままお亡くなりになっていたのです。ちなみに仏様は行政に引き取られ、行旅死亡人として処理されました。無論遺骨を引き取りに来る人間など誰もおらず、彼のテントのあった所にワンカップ酒と野の花を添えることくらいしかできる弔いがありませんでした。
そんなことがあってからMは自身の直観を信じるようになりました。それまでは自分は女にしては勘が鈍いなどと思っていたそうですが、自然や人の感情に敏感でないと生きていけないホームレス生活がそれを鍛えたのでしょう。今ではむしろ勘が鋭い方だと感じているそうです。特に人の生き死にに関しては気味悪がられるくらいに当たるとか……人はあらゆる環境に適応できると言いますが、人の能力のポテンシャルというのは本当に不思議なくらいに大きなものです。
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