赤ちゃん

私は新聞配達員をしている。
毎朝…というより夜中。大体2時くらいから朝刊を届けている。

届け先に15階建てのマンションがあり、いつも通り上の階から配ろうとエレベーターに乗った。すると、
「あ！すいません！」
赤ん坊を抱えた女性が小走りに乗り込んできた。私は急いで開くボタンを押し、彼女を迎え入れた。

今は2時半だぞ？こんな時間に?
あぁ…きっと夜泣きが酷くて外であやしてたのかな？と、勝手に納得する事にした。

するとエレベーター内で彼女が話し掛けてきた。

「私…母乳の出が悪いんです。粉ミルクだとあまり良くないって言うじゃないですか？だから普通の子より小さいんです。」

因みに私は身長185センチある。彼女を励まそうと、こう話した。
「でも僕も粉ミルクで育ったみたいですよ?それでもこんなに大きくなったんだから、きっと大丈夫ですよ。」

彼女は本当に嬉しそうに
「お兄さんも粉ミルクだったんですね！良かった。うちの子も早く大きくなってほしいな。」
と、目をキラキラさせていた。

ふと彼女の赤ん坊に目をやる。

彼女が抱っこしていたのは、薄汚れたボロボロの人形だった。