ソロキャンプ
投稿者:ねこじろう (147)
ずいぶん前からソロキャンプにはまっている。
ソロキャンプというと、なんだかかっこいいが、ただ週末に車で山あいに分け入って、適当なところでキャンプをするだけのことだ。
これは夏も終わりに近づいた頃の、ある日曜日に起きた不思議な体験だ。
昼頃に道具一式を車に乗せ、家を出る。
晴天とまではいかない薄曇りの空の下。
いつものとおりのルートで車を走らせていた
私がソロキャンプをするところはいつも同じ場所で、自宅から1時間くらいのところにある山あいの川辺である。
もう何回くらいだろうか、、、数えきれないくらい、そこには行った。
それには理由がある。
今から3年ほど前のことだ、、、
その頃私には妻がいて、一人だけだが8歳の息子もいた。
会社員だったのだが、郊外に小さな二階建ての家を買い、そこで平凡な暮らしを送っていた。
夏休みのある日、息子の貴司がキャンプに行きたいと言いだしたので、近くの山に家族で出掛けることにした。
山あいの川辺にテントを張り、昼は釣りやバーベキューを、夜は花火をして楽しんだ。
その夜、狭いテントの中で家族三人川の字になって寝ていたときのこと。
ようやく眠りにつこうかというときに、横にいる貴司が肩を揺する。
どうした?と聞くと「オシッコ行きたい」と言うので「そこら辺の川辺でしてこいよ」と答えた。
貴司は言われた通り、一人でテントを出ていった。
昼間の疲れもあり、私はそのまま眠りについてしまった。
しかしそれが、大きな後悔の始まりだった。
翌朝よほど熟睡していたのか、私は妻に肩を揺すられて目を開く。
そこには、険しい表情の妻の顔があった。
「ねぇ、ちょっと、貴司、知らない?」
「え!?」
横を見ると、貴司の姿がない。
あわててテントを飛び出し、辺りを探すが、見当たらない。
その日は日が暮れるころまで夫婦二人で貴司を探し回ったが、だめだった。
結局、警察に連絡したとき、辺りは真っ暗になっていた。
それからの半年。
警察、地元の消防団、本当に多くの人たちが息子の捜索に奔走してくれた。
もちろん私と妻も、、、
だが靴の片方さえも見つからなかった。
ちょっと切なく、しかし面白かったです