捨てられたドール人形
投稿者:寇 (4)
大学1年の春過ぎ、俺は進学した先で仲良くなったAとBの三人で廃墟に肝試しに行った。
町はずれの荒廃した路地裏に遺る、テナントが離れたまま手付かずのビルなんだが、夜逃げ同然に残された備品やDQNなんかがやってきては荒らし尽くした様な痕跡が相まって、かなり雰囲気のある心霊スポットみたいになっている。
地元の人達はその廃ビルがそういった輩の集まりや肝試しに使われている事は知っているらしいが、現在、所有者が不明なのか取り壊しや再開発の話も無く、放置されているのが現状だ。
そんな場所に深夜を回った時間に俺達は訪れた。
天井から配線を露出してだらりと首吊り状態となった蛍光灯。
誰かがひっくり返したデスク。
床に散乱したファイルに被さる土埃。
空気が悪いとはこの事だろうが、俺達は懐中電灯を片手に前方を照らし、各々が夜の雰囲気に充てられて楽しんでいた。
「こえーけど、何もないな」
「お宝探そうぜ。売れそうなもん落ちてねえかな」
肝試しの言い出しっぺAは怖いと連呼しながらも先頭に立ち、未開地である部屋を片っ端から蹴破り中を覗いていく。
対して、Bは肝試しそっちのけで泥棒…もとい転売できそうな代物を探しているのか書類棚やデスクの引き出しを手あたり次第開けている。
そういう俺もたかだか廃墟でビビる訳もなく、二人と別行動する様に別の部屋を覗きに行った。
そんな折、俺が上の階に行こうとした矢先の事。
Bが「お宝はっけーん!」と内部によく轟く大声をあげた。
その合図を受けて俺は階段から引き返してBが居た部屋に戻る。
そこには小さな人形を片手で拾い上げているBが居た。
人形はドール人形の様に精巧な細工で、懐中電灯の明かりを帯びた蒼玉の瞳が不気味なほど魅力的に見える。
白い肌に浮かぶピンクの唇。
五等身ほどにデフォルメされた1メートルもない全長に西洋のドレスを着飾っている姿は貴族のお嬢様風だったが、生憎と自慢のブロンド髪も黒ずんで汚れていた。
Bは人形を抱えなおすと頬についていた泥の様な汚れを親指で拭う。
「宝ってそれ?」
「結構高そうじゃね?洗えば売れるかも」
俺が眉を顰めて質問すれば、Bは嬉しそうに人形を叩いて埃を落とす作業に入った。
少し遅れてきたAが俺の後ろから覗くと、Bの異様な行動を目の当たりにして「あいつ何してんの?」と怪訝そうに訊ねてきたが、俺は「あれ綺麗にして売るらしい」と呆れた様に答える。
結局この日は心霊体験する事も無く、ただBが高く売れそうな人形を拾っただけに終わり、俺達は適当にコンビニに寄った後に解散した。
ただ、帰り際にBが薄汚れた人形に頬擦りしているのを目撃した時は流石に引いた。
だが、翌日からBに変化が訪れる事をこの時の俺は気付かなかった。
大学に行くと、いつも同じ講義を取っているAとBが早くに教室に居る事が多いのだが、この日はBが珍しく遅刻してやってきた。
「珍しいな」
面白くて結末までドキドキしながら読んだ
人形に魅入られるのって怖い
良ホラーでした!
実写とかで観たくなる話
人形こわい
面白かった!
次回作も期待してます!!
正直、怖くはありませんが好きです。
小学生の時に見た「私が拾った人形を捨てようとする兄が夢の中で人形に惨殺されて、起きたら兄が殺されていて近くに人形が落ちていた…」って話以降、「生き人形」の話を含め人形話好きです。