捨てられたドール人形
投稿者:寇 (4)
俺とAが談笑しつつBにそう投げ掛けると、Bは照れ臭そうに「ああ、人形の洗濯が思ったより手間で」と答える。
Bの返答を受けた俺は、ああコイツ本当にあの人形洗って売るつもりなんだと思うが、表面上は「本格的だな」と愛想笑いした。
その日以来、Bは度々遅刻する様になった。
講義が始まるギリギリに駆け込む事もあれば、半分以上時間が過ぎた頃にやってくる事もあり、よく教授に説教されては追い出されていた。
それが同じ授業で続けば当然出席数が足りず単位が落とされる事になるので、俺とAは始業前や、それこそ前日に「明日ちゃんと来いよ」とメールで念を押す事もあったが、Bの遅刻癖は悪化するばかりだった。
そんな事があった二カ月後、タイミング的には前期の試験に向けた重要な授業があるので、今回はBに直接電話する事に決めていた。
Bの家から大学まで、電車移動も含めて凡そ一時間ちょい。
俺とAは一限目に講義を居れていたから構内のベンチに座ってBに電話を寄越す事にした。
「あ、B?」
意外にもBはすぐに電話に出た。
「……何?」
ただ機嫌は良くないのか声色はかなり低く、口調も間延びしている。
俺は用件だけ伝えようと、Bの雰囲気に呑まれる前に機械の様に口を開いた。
「今日の授業大事だからちゃんと来いよ。マジで単位落とすぞ」
それだけ伝えて通話を切ろうと思ったが、何やらBの後ろから微かに女性の声がする事に気付き、思わず聞き耳を立てる様にしてスマホに耳をあてる。
『……キャハハ……』
耳を澄ませると僅かに聞こえたのは楽しそうに笑う女性の声。
その女性と話しているのか、Bがブツブツと何を口ずさんでいるが活舌が悪くて内容は聞き取れなかった。
『あ、悪い。なんだって?』
すると、少しだけはっきりとした口調でBが聞き返してきたので、俺は慌ててスマホを握り直して同じ内容を伝えると、Bは「あー、うん」と覇気の無い返事をしてきた。
Bとの通話後、神妙な面持ちでAが「B、どうだった?」と訊ねてきたが、俺は先ほどの女性の声をBの彼女だと推測し、「何か彼女とよろしくやってた」と苦笑いして答えた。
「え、B彼女できたの?」
Aは俺の返答にかなり驚いた様子で前のめりになったが、俺は「分からんけど、女の声してた」と適当に処理した。
実際、Bは俺達と違ってかなり肉食系だから女友達も多い。
きっと俺達が与り知らぬ場所で合コンとかそういう場で彼女を作っていても何ら不思議ではない。
そう考えると、女が出来て単位を落としそうになるBは極めてバカ野郎だ。
俺達は再三にわたり忠告してきた手前、次の授業も来なかったらそれはもうBの自業自得だろうと言う事で決着し、それ以上連絡する事は無くなった。
二カ月後、Bはとうとう授業にも来なくなり前期試験にも現れなかった。
流石に一つの単位を落とすのと前期全ての試験を棒に振るのとでは事情が違いすぎる為、俺達は慌ててBに連絡を取ろうとした。
けれど、Bのスマホは繋がるものの、B自身が通話に出てくれないので一向に連絡がつかない状態が続いた。
面白くて結末までドキドキしながら読んだ
人形に魅入られるのって怖い
良ホラーでした!
実写とかで観たくなる話
人形こわい
面白かった!
次回作も期待してます!!
正直、怖くはありませんが好きです。
小学生の時に見た「私が拾った人形を捨てようとする兄が夢の中で人形に惨殺されて、起きたら兄が殺されていて近くに人形が落ちていた…」って話以降、「生き人形」の話を含め人形話好きです。