お土産のピエロ

私には3つ年下の弟がいます。

父と母のいいとこ取りで生まれてきて、顔も整っていれば、話し方も柔和で、とても賢くなんでもできる自慢の弟です。

年の離れた妹もすごく懐いていて、本来誰にでも好かれる人なのです。

だけど私はこの弟のことが苦手です。

苦手どころかなるべく距離を置きたいと思うくらいに恐れています。

私と弟は血が繋がっている実の姉弟。

しかし、どうしても私にはそう思えません。

私は弟のことを弟だと思えないのです。

私の弟は中学生の頃に、思春期に差し掛かりました。

それまでも勉強よりも遊ぶことを優先するような自由な弟でしたが、中学生になるとそれに拍車がかかるようになります。

悪い仲間とつるんで、夜遊びや悪いことをするようになり、その度に学校から呼び出しがかかり、父と母はそんな弟に手を焼いているようでした。

どうしたら真面目に勉強をしてくれるのかと両親はずっと悩んでいました。

しかし、私は頻繁に弟とは話していたし、夜にどこかに出かけるときは、父や母に黙っていてほしいと頼まれたりして、姉弟仲は良かったのです。

つるんでいる友達も本当に悪い子たちというよりは、ちょっとやんちゃな子たちというイメージで、そこまで心配はしていませんでした。

思春期が終われば、その内弟も落ち着くだろうと楽観的に思っていました。

ここまで話すと違和感に気づく人もいると思いますが、弟は今と昔でまるで別人です。

育っていく過程でゆっくりと今の優しく温和な弟に変わっていったわけではなく、ある日突然ガラッと変わりました。

今はもうまるで別の人と話しているように錯覚するくらい雰囲気が違います。

私はそんな弟に違和感を覚えており、それが弟を苦手だと思ってしまう理由なのです。

弟が変わったのは中学二年の一学期になってからでした。

友達におみやげをもらったといって、嬉しそうに私に報告しにきたことを今も鮮明に覚えています。

確かクラスにすごく可愛い子がいて、その子がハワイに行ったおみやげにそれをくれたらしいです。

弟にそれを見せてもらって、私は見た瞬間から「悪趣味」と思いました。

その子からのおみやげは不気味なピエロの人形で、どこからどう見ても可愛いとは言い難い見た目をしています。

弟はその子に恋心を抱いており、何をもらったかよりもその子にもらったことをとても喜んでいるみたいでした。

ただ、私は気味が悪いとしか思えなかったです。

それをプレゼントする女の気持ちが分からないと思いました。

弟が部屋に不気味なピエロの人形を置くようになって、しばらく私はあまり寝付けなかったです。

理由は廊下や天井裏で何かが走るような音が頻繁に聞こえて、睡眠妨害に遭ったからでした。

音の原因を突き止めようと何度も音のする場所を調べてみたけど、何か分かりません。