深夜の間違い電話
投稿者:ぴ (414)
その日夜遅くに急に家の電話が鳴りました。
もう0時過ぎだったので、最初は出るか出るまいか迷ったのです。
しかし何か緊急の電話だったら困るなと思って、受話器を取りました。
それは間違い電話でした。
向こうが「ヤマナカ(仮)ですが」と言いましたが、聞き覚えのない苗字でした。
私が「山中…どなたでしょうか?」と聞いたら、しばらくザザザ…と電話口から妙な音が入って、少しの沈黙の後に「ヤマナカシズエ(仮)です」と言うのです。
まったくピンとこない心当たりのない名前で、きょとんとしてしまいました。
こちらが名乗るとすぐに慌てて「間違えました」と電話が切られたのです。
だからただの間違い電話として、私はすっかりそんなことを忘れていました。
私がこの話を出したのは、それから数週間後ご近所さんと世間話をしているときでした。
電話の話になってなんとなく思い出して、以前深夜遅くにこんな電話があったと話したのです。
そしたらそのご近所さんはなぜかぎょっとした顔をしていました。
「ヤマナカシズエ?」となんだか名前に心当たりがあるようだったので、聞いてみたのです。
そしたらご近所さんは私に「何かの間違えだと思うけど、それあなたの前に住んでいた人の名前なのよ」と言いました。
私はてっきり引っ越していったのかと思ったのですが、よく聞くと話は違ったのです。
その人はもう死んでいると聞きました。
なんでも借金を苦に近くのビルから飛び降り自殺をしたらしく、この付近では大きな騒ぎになったそうです。
しかもその人が飛び降り自殺を図ったのは、丁度深夜0時過ぎだったと後で別のご近所さんから聞きました。
ご近所さんは「いたずら電話かしら」なんて他人事みたいに言っていましたが、何を目当てにそんな手間のかかることをするのかと疑問です。
もしかしたら私の家にはまだ死んだ山中さんの魂が漂っているのかもしれないと怖くなりました。
あれ以来、深夜に電話がかかってきていませんが、例えかかってきても極力取らないようにしようと思っています。
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