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心霊

サクコウさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

団地の女
短編 2022/07/22 22:50 1,142view
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これは友人Aが話してくれた幼い頃の恐怖体験である。

小学生の頃、団地に住んでいたAは同じ団地に住む友達のBと団地で隠れんぼをすることになった。時刻は放課後。当たりはすっかり夕焼けに包まれカラスが鳴いている。隠れんぼは、Aの鬼から始まった。心の中で100秒数えたAは、Bを探すため1階から階段をのぼっていく。3階まで踊り場や廊下、物影、隅々を探しながら進んできたがどこにもBは見つからない。それどころかいつもはよく会う立ち話好きなご近所さんにすら出くわさなかった。ならば次は4階だと、Aは階段に足を踏み入れる。
その時だった。
Aの動きが止まる。冷たく乾いた風がAの首筋を掠めた。

視線である。

誰かの視線を感じるのだ。もう1段目に足をかけている、この4階へ向かう階段の先から、誰かの視線を確かに感じる。
大きな音を立て速まる鼓動、全身を駆け巡る嫌な予感、下を向いたまま動けない体。しかし、「Bかもしれない、Bだったら私の勝ちだ。」そう思ったAは自分の体を奮い立たせ勢いよく目線を上げた。
目線の先には階段の折り返し地点に当たる踊り場があった。

そして、

顔を半分だけ覗かせ見開いた目でこちらを見つめる女。

Aの口からヒュッと音が出る。上手く呼吸が出来ず視線が外せない。
咄嗟に、もしかするとBが驚かせているのかも、誰かここに住んでる人かも、そんな想像をするがそれを嘲笑するように目の前の光景は広がっている。

何せ女は首だけであり、地面から生えるように垂直に置かれているのだから。

血走った瞳孔がこちらを見つめ、生気のない白い肌とは真反対に真っ黒な髪が地面に絡みついている。
Aは這いずるように逃げ出し、絶叫と共に階段を駆け下りた。2階にさしかかり、聞きなれた声で名前を呼ばれようやく我に帰る。Bだった。
Bは4階でもその上の階でもなく、2階にある自分の家に隠れていたのだ。

その後、Aの話を聞いたBの母は4階で誰かが倒れているのかもと思い階段へ向かったが、そこには誰もいなかったそうだ。

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