いじめられたいじめっ子

私が中学生の頃に、陰湿ないじめがありました。

あろうことか担任は見て見ぬふりをし、私を含めた関係ないクラスメイトは巻き込まれるのが怖くて、言えませんでした。

いじめのターゲットが変わるのが怖かったのです。

このせいでクラスで浮いた存在だったいじめられっ子が自殺を図ることになりました。

自殺は失敗に終わり命は助かりましたが、そのままその子は学校を転校していきました。

その子をいじめた犯人は分かっています。でも学校もいじめがあったことを外部に知られたくなかったのでしょう。この事件を隠蔽してしまいました。

いじめっこは相変わらずターゲットを変えて別の子をいじめていました。

担任や学校も何事もないかのようにそれを黙認。

だけどそれからしばらくしていじめっ子が突然不登校になったのです。

みんな訳が分かりませんでした。

いじめっ子をいじめるような子はクラスにいません。なのにいじめっ子は酷く学校を怖がっていて、登校拒否になったのです。

いじめっ子をいじめている人が誰なのかとクラスメイトが何人も呼ばれて担任に聞かれました。

いじめっ子は「あの子にいじめられる」と言ったそうです。でもそれが誰だか言わないのだそうです。

私はクラス委員だったこともあり、先生にいじめっ子に話を聞いてほしいと頼まれました。

すごく嫌だったしなぜ私がと思いながら、その子の家を訪ねたのです。

久しぶりに会ったその子はとてもじゃないけど、今までクラスを牛耳っていた人物と同一人物に見えませんでした。

私が聞いたら「菜の葉ちゃんに虐められる」と打ち明けられました。

しかし、私は困りました。だって菜の葉なんて子はクラスにいません。

追い詰められたように震えるいじめっ子の生徒は私に体育祭で撮影したクラスの集合写真を見せたのです。

そしてしきりに「この子」といいます。私はそれを見てぞっとしました。

だってその子が指さしている写真の場所には誰も写っていなかったのです。

私はなんだか関わるのが怖くなってきて、用事があると嘘をついてその子の家から出ました。

それから1週間もしないくらいで、いじめっ子だった女の子が学校の旧校舎で首を吊って亡くなったことが全校生徒に知らされました。

自殺だったらしいです。学校は衝撃が駆け巡りました。

結局いじめの主犯格だと思っていた人物が自殺してしまって、本当の主犯格が誰だったのか私には分からなくなりました。

いじめっ子の嘘の可能性もありえるけど、あの怯え方は嘘でもないような気がします。

もしかしたらあの子を誘導して突き動かしていた「菜の葉ちゃん」という人物がクラスを支配していたのかもしれません。

ただ自殺したいじめっ子が怖がっていた菜の葉ちゃんはクラスにはいなかったし、写真には写っていなかったのです。

あの日のあの子には一体なにが見ていたのか考えれば考えるほど分からなくなり、恐怖を感じます。