発酵食品
投稿者:道しるべ (4)
私は旅行したときや近所のスーパーで各地の物産展が開かれているときなど、ご当地の名産品などを買い漁るのが趣味なのです。
とくに日持ちのする缶詰や瓶詰などがお気に入りで、冷蔵庫内にたくさんコレクションしては晩酌のつまみにチビチビやるのが何よりの楽しみでした。
個人的に好きなものはやはり瓶詰の王道、塩辛です。
かつおやイカなどメジャーなものからウニやホヤなどの高級品、はたまた地域色の強い普段は見かけないような材料を使った塩辛などついたくさん集めてしまうのです。
そしてその中から今日の一品を選ぶ瞬間こそが私の人生におけるささやかな幸せのひとときなのでした。
私は今日の一品を選ぶと、とっておきの日本酒を用意して晩酌を始めることにしました。
とはいっても選んだ瓶のラベルを見るとそれはジャムのものなのです。
しかし中身は明らかに塩辛でした。
なんだかうっすら記憶にあるような気がします。
確か以前瓶を落として割ってしまったので、空いていたジャムの瓶に移し替えたような……
すこしニオイを嗅いでみるとやはり海産物のようでした。
よし、じゃあ今日はこの塩辛が何の塩辛なのか当ててやるぞ~と1人で盛り上がってしまいました(笑)
口に含んだ瞬間まず気付いたことは「あれ、しょっぱくないな」ということでした。
塩辛というのは長期間熟成させるとだんだん塩味が穏やかになっていきます。いわゆる「塩が枯れる」というやつですね。塩が枯れてまろやかに熟成した塩辛は最高の味です。
しかしこの塩辛はちょっと違います。塩分はほとんど感じられずちょっとチーズのようなまったりした舌ざわりがします。そしてこの味には心当たりがありました。
間違いなくマグロです。
そしてこれは塩辛というより、そうアレです。
「ツナマヨっぽいな」
うーん、ツナマヨを瓶に入れた記憶はないのですが……しかしこの味はどう考えてもツナマヨです。
妻がツナ缶を開けて作ったものを保存しておいたのでしょうか?
しかし彼女は作ったものを瓶に入れておく習慣はなかったはずです。
ちょうど妻は出かけているので帰ってきたら聞いてみようか、などと考えていました。
とりあえず味はいいのですが塩気が薄いので醤油でもかけてみるかと戸棚を開けた瞬間、私の脳内がスパークしました。
そうです、私はすべてを思い出したのです。
確かにこれを瓶に詰めたのは私でした。
それは半年ほど前のことです。私はアイツが残したものを勿体ないからと瓶に詰めて翌日またあげようと思っていたのをそのまますっかり忘れていたのでした。
アイツ……我が家の飼い猫・ピー助に……
ピー助悪くないよ