大好きな歯医者
投稿者:クミン (1)
突然だが私は歯医者が大好きだ。
現在私は19歳だが高校一年生のときに新しくできたその歯医者に行くと先生は丁寧で優しく、そこの歯科衛生士も皆愛想がよくてとても気分がよかった。
そんなものだからその歯医者は数年もすると地元の名医となっており、巷では歯医者に行くならその先生のところと周囲の人は皆そう言っていた。
もちろん、わたしもその一人で私は週に一回はクリーニング、月に一回は定期検診と頻繁に歯医者に行っていて、どんなに小さい虫歯も見つけてくれる先生は私の中で神様と呼べるほど信頼は高かった。
私は進学して学校からの距離が遠くて寮に行くようになってしまったとき先生に
「この歯医者に来るの最後かもしれないです。先生以上の名医は見つからないって思ってます。今までありがとうございました」
と言ったら先生は微笑んで
「ありがとう、君も頑張ってね」
と言ってくれた。私は3年間通いつめたこの歯医者を離れるのが嫌で仕方なかった。
それからのこと、入寮して二週間ほど経ったある日私は寮の近くの歯医者に行っていた。
正直に言うと電車で時間がかかってでもあの歯医者に行きたかったがお金もないし、電車賃がバカにならないので諦めてしまった。
憂鬱だった。歯医者を変えるのには勇気がいるし、雑な処置をされたらどうしようと思っていた。
そんな気持ちで口を開いて歯を見せると、新しい先生は眉間に皺を寄せこう言った。
「奥歯という奥歯が虫歯です。この虫歯は数年放置しないとここまでなりません」
私はとても戸惑った。それはもう本当に戸惑った。
そんなはずはない、私は歯医者が大好きで頻繁に通っていました。クリーニングも定期検診も頻繁にやっていました。
とそう訴えると先生は言いにくそうな顔で
「この場所の虫歯たちは難しいからきっと数年放置されていたのでしょう」
と言われた。
私は唖然としたまま虫歯の治療を受けて、歯茎の麻酔の痛さに悶え、その日はそれで終了した。
帰りに虫歯の写真を見せてもらうと、数年放置されていたことに納得するほどひどい虫歯でこのレベルがあと三本ありますと淡々といわれたとき、そのときに初めて自分が神様のように讃え、地元の名医とまで呼ばれたあの先生にこの上ない恐怖を感じた。
ニセ歯医者ですか?