時空を超えた道案内
投稿者:駿 (5)
短編
2022/05/22
15:19
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僕は方向音痴で、子供の頃はよく道に迷っていました。
その度に、10歳くらいの男の子が手招きをして僕の30メートルくらい前を歩いているのです。
その子を追いかけているうちに知っている道に出て家に帰れる、というのが毎回のパターンでした。
大人になりすっかりそのことを忘れていたある日。一人暮らしをしていた僕が久々に実家に帰省したときのことです。
両親が古いアルバムを見つけたから一緒に見ようと言ってきたのです。それは、祖父母が作ったアルバムで、父が幼い頃の写真がたくさん収められていました。
ふと、見覚えのある顔を見つけました。どこかで会ったような・・・と記憶を辿ると、いつも道に迷ったときに導いてくれた子だと思い出しました。この人は誰かと父に聞いたところ、その人は父のいとこで11歳のときに病気でなくなったのだそうです。とても面倒見がいい人で、父もよく一緒に遊んでいたのだそうです。
「子供の頃、道に迷う度にこの人が助けてくれたんだよね。」と、父に話しました。信じてもらえないだろうと思っていたのですが、父は疑いませんでした。
「弟や妹が迷子になると一日中でも走り回って探し、必ず見つけ出してくるような奴だったからなぁ。道に迷ってるお前が弟に見えたのかもな。」そう言って父は笑いました。
大人になってからはその人に会うことはなくなってしまいましたが、もしももう一度会えたら時空を超えてまで助けてくれたことへの感謝を伝えたいと思います。
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