うちは4人兄弟だったはず

物心つく前から、うちは兄弟仲が良かったです。

すごく優しくて面倒見のいい長男とやんちゃでけんかっ早い次男、ぼんやり自由人な三男で、そんな中、待望の娘として生まれた妹の私は両親からも兄からもねこっ可愛がりされて育てられました。

自分でも多少我儘に育った自覚はありましたが、それも仕方ないと思います。

私が何をしても両親や兄たちが「かわいい、かわいい」と甘やかして育てたせいだと思います。

長男は小さい頃から私の一番の理解者で、何を言わなくても私の気持ちをそっと理解してくれる優しい兄でした。

勉強もすごくでき、秀才と言われて学校でも人気の自慢の兄でした。

次男は一時は反抗期もあり荒れかけていたこともあるやんちゃな人物でしたが、妹の私には専ら弱かったです。

どんなに他に態度が悪くても、私にはいつも頼れる兄貴でいてくれたし、何かあったら俺に言えとすごく心強かったです。

三男はちゃらんぽらんで何も考えていないようでいて、たまに突然確信をついてくるところがありました。我が道を行くタイプで、一番年齢が近いこともあり、同じ目線で話せる兄でした。

そう私たちは自他共に認めるくらい仲が良くて、とても絆が強かったです。

何かあったらお互いに助け合えるような兄弟でいてと両親は願っていて、その通りの兄弟になりました。

そんな私たちに変化が訪れたのは私が高校生のときでした。

それは本当に突然のことで、私たちは最初なかなか理解ができませんでした。だって突然長男が姿を眩ましたのです。

長男が大学を卒業していよいよ社会人となるときに、突然いなくなりました。そして兄弟みんなで必死に探したけど、長男は見つかりませんでした。

家出なのかもしれないけど、もしかしたら事件か何かに巻き込まれたかもしれないから、私たち兄弟は両親に「警察に届け出を出そう」と言いました。

あのしっかりして冷静だった兄がこのままいなくなってしまうなんて考えられないし、絶対おかしいと私は言いました。

そしたらうちの両親が言った言葉にぞーっとしたのです。

だって両親は行方を眩ました長男のことを知らないと言い出したのです。

最初は喧嘩でもして、意地になっているのかと思いました。

例え大喧嘩をしていたとしても、そんなことをいう両親は大人げないと思いました。

これまで家族みんなでずっと支えあって生きてきたのに、なんだか両親に裏切られたような気持ちになりました。

怒る私を兄たちが宥めてくれ、そして兄たちが警察に相談しにいくと言ってくれて、私はほっとしたのです。だけど、異常なのは両親だけではありませんでした。

この出来事があまりに許せなくて、私はその日の夕方に友達に電話で愚痴を聞いてもらいました。

兄が行方不明なのに、ちっとも心配せずにどういうつもりなのか兄が最初からいなかった扱いすることを友達に愚痴ると最初は「それはヤバイね」と話を聞いてくれたのです。

けど次に出た言葉に私は思わず、カッとしました。だって友達が「確か3人兄弟だったよね」と言ったからです。

私は「はー！？何言っているの。4兄弟だよ！」と怒りました。

ついうっかり間違ったとしても、長男を知っているはずの友達にまで両親と同じようなことを言われ、腹が立ってたまらなかったです。

友達は私の剣幕に、「ごめん、間違ったみたい」とひたすら謝っていました。

翌日になると、兄たちは今日中に警察に相談してくると言いました。私はそれにほっとして、早く長兄が見つかるように祈ったのです。

その日の学校で、不気味なことがありました。クラスメイトたちが口をそろえて、「３兄弟だったでしょ」と言うのです。