事故の記憶
投稿者:ネギ (1)
ぼくはその日、仕事の関係でいつもの職場ではなく二つとなりの町にある拠点までクルマで行くことになっていました。
仕事は夕方くらいまでにはなにごともなく終わり、帰り道に国道でクルマを飛ばしていたときのことです。
疲れていたのでしょうか。急にどっと眠気が来てしまったために、これは運転していては危ない、と思って通りがかったコンビニにクルマを停めて一休みしようとしました。
まだ、自宅のある町のとなり町までしか来ていませんでした。
ふだんよりもうんと早い時間に叩き起こされて、夕方までせわしなく働き、思えば朝食以来なにも食べていませんでした。
そのときぼくは、眠気覚ましの強めのコーヒーと、お気に入りのたまごサンドをカゴに入れて、新しい雑誌を軽くパラパラと見てから、レジに向かおうしていました。駐車場に面した大きな窓のあるところです。
…!
がしゃんと大きな音を立てて窓が割れ、雑誌のラックがぼくに目がけて突っ込んできました。
ぼくの体ははそのまま整髪料やらヒゲソリやらのある商品棚にめりこんでいきます。
粉々になったガラスの破片が、まるでひらひらと宙を舞う布団の羽毛のようにゆっくり、ゆっくりと飛んでいます。
なにもかもがゆっくりと動いているように見えました。
なにが起こったのか、最初はよくわかりませんでしたが、どうやら白いセダンが店内に突っ込んできたらしいということをぼくはやっと理解しました。
ああ、アクセルとブレーキを踏み間違えた、というやつかな。
どこか他人事のように自分の頭はうすぼんやりと思考をつづけました。
背中というか腰というか、そのあたりがめりめりと嫌な音を立てています。
ああ、そうか、おれの骨は耐えられずにぽきんと折れてしまうんだな、と思いました。
吐き気がして、腹の中のものを出すと、赤黒いものがいっぱい出てきました。
血に混じって何だかよくわからない、焼き肉屋さんのモツみたいなものも出てきますが、それが何なのかは想像したくもありませんでした。
ああ、折れた雑誌の棚がおれの腹に刺さって滅茶苦茶にかき回しているのだな、と思いました。
とにかく、視界のなにもかもが緩慢に流れて行き、もうどうしようもなくぼくの人生が終わりにさしかかっていることがわかりすぎるくらいによくわかるのでした。
悲鳴が遠くに聞こえ、「大丈夫ですか」と言っているのも何となくは聞こえていましたが、もはやぼくの眠気は絶頂に達しており、視界がぼやけています。
きっと白目をむいて、半分以上眠ってしまっているのでしょう。
起きていますよ、聞こえていますよ、と言いたかったのですが、ぼくはもうとろんとしていました。たまごサンド食べたかったな…。
がしゃん!
大きな音に、ぼくは目を覚ましました。
場所はいつものたばこくさい運転席。
ぼくはコンビニの雑誌売り場ではなく、自分のクルマのなかにいました。
顔を上げると、目の前にコンビニの店舗があって、どういうわけか正面の大きな窓に白いセダンが突き刺さっていました。
それは、さっきぼくの体を男物の整髪料の棚に押し付け、押しつぶしたのとまったく同じクルマのように見えました。
けれども、今度はだれも轢いてはいないようです。なにがあったのかさっぱりわかりませんでした。
夢の中の出来事? それとも・・・コエー!!
ま、とりあえず無事で良かった!
これぞ不思議な話って感じでイイ
独特な話ですね
なんとも言えない不気味さがある
パラレルワールドでしょうか。何はともあれ、御無事で何よりです。
怖いけど句読点多すぎ
最初のって走馬灯だよね
不思議な事は、ありますがその最中は実感があまり湧かないものです。